人材派遣会社の新規営業では、「派遣先を増やすこと」と「売上につながる案件を増やすこと」は同じではありません。
企業から派遣依頼を受けても、自社にその職種・地域の登録スタッフがいなければ提案できません。反対に登録スタッフが多くても、その人材を受け入れる派遣先がなければ稼働につながりません。
そのため派遣先開拓では、営業件数だけでなく、次の流れを一つのファネルとして見ます。
開拓対象企業 → 接点 → 商談 → 派遣依頼・案件 → 候補者提案 → 職場見学・条件調整 → 契約 → 就業開始 → 継続・増員
テレアポや飛び込みを増やすだけではなく、自社が供給できる人材と、企業側の人手不足を一致させることが重要です。
本記事では、人材派遣会社が派遣先を新規開拓する方法を、営業リスト・法人営業・既存顧客・Web集客まで含めて整理します。
派遣先開拓は「案件数」ではなく「人を提案できる案件」を増やす
派遣会社の法人営業では、一般的なBtoB営業と違い、受注した後に「派遣できる人がいるか」という供給条件があります。
そのため、次のKPIを分けて見る必要があります。
| 段階 | KPI例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 開拓対象 | 対象企業数 | 自社の得意職種・地域に需要があるか |
| 接点 | 架電・メール・反応数 | リストと訴求が合っているか |
| 商談 | 商談数・商談化率 | 人員課題を持つ企業へ届いているか |
| 案件 | 派遣依頼・求人件数 | 実際の人員需要を受注できているか |
| 提案可能性 | 提案可能案件率 | 登録人材で対応できるか |
| 人材提案 | 初回提案までの日数 | コーディネーター連携が速いか |
| 就業 | 職場見学・就業開始数 | 条件・マッチングが合っているか |
| 継続 | 契約更新・増員 | 派遣後の品質が評価されているか |
「新規取引先10社」を作っても、実際の派遣依頼がなければ売上は増えません。
「案件100件」を持っても、人材を提案できない案件が大半なら、コーディネーターと営業の工数が増えるだけです。
派遣会社では、案件獲得とスタッフ集客を別々の部署課題にせず、どの職種・地域なら供給と需要が同時に成立するかを見た方が成約しやすくなります。
派遣先開拓の前に「売りたい人材」を決める
新規営業では「どんな企業をリストに入れるか」から考えがちですが、その前に自社の人材供給側を確認します。
登録スタッフが多い職種
事務、製造、物流、IT、介護、販売など、現在登録者が多い職種を確認します。
登録者がいるのに案件が少ない職種は、派遣先開拓の優先候補です。
稼働まで進みやすい地域
登録者数だけでなく、通勤可能範囲やシフト条件を見ます。
たとえば同じ札幌市内でも勤務地によって通勤難度は違います。広い地域名だけで「登録者がいる」と判断すると、案件を取った後に紹介できないことがあります。
受注しやすい勤務条件
フルタイム、短時間、夜勤、土日、紹介予定派遣など、自社が集めやすい働き方を確認します。
営業側が高単価案件だけを取り、コーディネーター側では条件に合う人がいないという状態を避けます。
過去に継続しやすかった派遣先
新規契約数だけでなく、更新率、増員、離職、トラブルの有無を見ます。
売上が長く続いた派遣先の業種・職種・規模を整理すると、次に開拓すべき企業像が見えやすくなります。
派遣先開拓の営業リストは「求人中かどうか」だけで作らない
求人を出している企業は、人材需要がある可能性が高い重要なターゲットです。
しかし、求人媒体に掲載している企業をすべて同じ優先度にすると効率が落ちます。
営業リストでは、次のような情報を組み合わせます。
- 募集中の職種
- 募集人数
- 勤務地
- 雇用形態
- 募集開始時期
- 長期間採用が続いているか
- 複数媒体で募集しているか
- 新拠点・新工場・新店舗の情報
- 繁忙期・季節変動
- 自社の登録人材との適合
- 過去の取引実績
特に人材派遣では、「採用ニーズがある」だけでなく、派遣という選択肢が合う人員課題かを見る必要があります。
短期の増員、欠員補充、繁忙期対応、採用難職種、プロジェクト増員など、派遣のメリットを出しやすい状況を優先します。
人材派遣会社の派遣先開拓方法
主な方法は次のとおりです。
テレアポ
短期間で多くの企業へ接触できるため、現在も新規開拓の基本手段です。
ただし「人材派遣を使いませんか」だけでは断られやすくなります。
現在募集している職種、欠員状況、繁忙期、採用期間などを確認したうえで、「なぜこの企業へ連絡したのか」を具体化します。
メール・問い合わせフォーム
担当者不在でも情報を残せるため、電話と組み合わせやすい方法です。
文章では、会社紹介を長く書くより、
- 対応できる職種
- 対応地域
- 現在紹介できる人材像
- 類似業界の実績
- 急募対応の流れ
など、企業側が判断しやすい情報を短く伝えます。
求人掲載企業への営業
求人媒体、企業採用ページなどから採用中企業を見つけます。
採用ニーズが顕在化している点は強い一方、競合派遣会社や求人広告会社も同じ企業を狙っています。
「求人を出していますね」だけでなく、職種・地域・採用難度を踏まえた提案が必要です。
既存顧客からの増員・他部署展開
完全な新規企業だけが派遣先開拓ではありません。
現在の派遣先で、別部署、別拠点、別職種の需要を確認する方が、新規テレアポより早く案件化することがあります。
営業担当者は契約更新だけでなく、現場責任者や人事へ定期的に採用計画・繁忙予定を聞きます。
紹介・提携
既存顧客、士業、地域金融機関、採用支援会社、同業他社などから企業を紹介してもらう方法です。
紹介は信頼を引き継げるため強い一方、件数を急激に増やしにくいという特徴があります。
SEO・Web集客
法人担当者が「派遣会社を探す」「特定職種の人員不足を解決する」ときに、自社サイトを入口にする方法です。
成果まで時間はかかりますが、広告やアウトバウンドのように接触を止めた瞬間にゼロになるものではありません。法人向けサービスページ、職種・業界別ページ、事例、課題記事を資産として蓄積できます。
派遣先への営業では「自社の強み」を供給能力まで分解する
「地域密着」「丁寧なフォロー」「幅広い職種に対応」といった言葉だけでは、企業側が比較しにくいことがあります。
派遣先が知りたいのは、より具体的な供給条件です。
- どの職種に強いか
- どの地域で派遣できるか
- どのような経験層がいるか
- どの勤務時間帯に対応できるか
- 急募時にどのような流れで候補者を探すか
- 派遣開始後に誰がフォローするか
- 類似企業でどんな稼働実績があるか
たとえば「製造業に強い」だけでなく、ライン作業、検査、フォークリフト、設備保全など、企業が発注する職種単位まで整理します。
ただし登録者数、就業開始までの日数、定着率などを営業訴求に使う場合は、社内データで確認できる数字だけを掲載します。
商談では「何人必要ですか」だけで終わらせない
派遣依頼を受けるときは、人数・時給・勤務時間だけでなく、就業が成立する条件を聞きます。
- 欠員か増員か
- いつまでに何人必要か
- 予定される派遣期間
- 必須経験・資格
- 未経験可否
- 現場で落ちやすい条件
- 職場環境
- 通勤手段
- シフト変更余地
- 直接雇用の予定
- 他社派遣会社の利用状況
- 過去に定着しなかった理由
これらを把握すると、登録スタッフへ求人を説明しやすくなり、ミスマッチによる早期離職も抑えやすくなります。
派遣先開拓と登録スタッフ集客は別ページ・別KPIで管理する
人材派遣会社では、法人営業と求人・登録集客が同じ「集客」という言葉で語られがちです。
しかし検索者もコンバージョンも異なります。
| 項目 | 登録スタッフ側 | 派遣先企業側 |
|---|---|---|
| 相手 | 求職者 | 採用担当・現場責任者 |
| 主な入口 | 求人媒体・Indeed・検索・広告 | 営業・紹介・検索・広告 |
| CV | 応募・登録 | 問い合わせ・商談 |
| 成果 | 就業 | 案件・契約 |
| Webページ | 求人・職種・地域・働き方 | 法人サービス・対応職種・事例・FAQ |
同じトップページで両方を説明することはできますが、下層ページは分けた方が検索意図とCTAを合わせやすくなります。
登録スタッフ集客については別記事で詳しく扱い、派遣先開拓ページでは法人側だけに集中します。
Web集客で派遣先を増やすための法人向けページ設計
人材派遣会社のサイトでは、求職者向け求人ページが大半を占めることがあります。
企業側から見ると、「どんな人材を派遣できる会社なのか」が分からないサイトになっているケースがあります。
法人向けに必要な主なページは次のとおりです。
法人向けサービスページ
対応職種、対応地域、派遣開始までの流れ、契約、フォロー体制、問い合わせをまとめます。
職種・業界別サービスページ
実際に専門性がある場合は、製造、物流、事務、ITなど、企業が探す単位でページを分けます。
単なるテンプレート複製ではなく、必要人材、採用課題、派遣時の注意点、事例などを変えます。
導入事例
企業側は「同じ業界で対応できるか」を見ます。
守秘義務に配慮しつつ、業種、職種、人数規模、課題、対応内容を具体化すると営業資料として使えます。
法人向けFAQ
派遣と紹介予定派遣の違い、契約期間、料金の考え方、急募対応、受入準備など、初回商談で毎回説明する内容をWebに整理します。
問い合わせフォーム
求職者登録フォームと法人問い合わせフォームを分けます。
「派遣を依頼したい」「見積もりを相談したい」「○名必要」といった企業向け選択肢を置くと、営業担当へ引き継ぎやすくなります。
SEOで派遣先問い合わせを狙うときのページ構造
法人向けSEOでは、求人記事とは別の検索意図を狙います。
基本構造は、
法人サービスハブ → 職種/業界別法人ページ → 事例・課題記事 → 問い合わせ
です。
企業が特定の人材課題を検索する場合、課題記事からサービスページへつなげます。
一方、「人材派遣会社を比較したい」という選定意図には、サービス内容、対応領域、事例、契約の流れがまとまったページを担当させます。
求人詳細ページから無理に法人問い合わせを取ろうとするより、法人向けURLを独立させた方が、検索エンジンにも利用者にもページの目的を伝えやすくなります。
厚生労働省が求める情報提供も、法人サイトの信用設計に含める
労働者派遣事業では、派遣元事業主による情報提供が必要な項目について、原則としてインターネットを利用して広く提供することが求められています。厚生労働省は人材サービス総合サイトの活用も案内しています。
コンプライアンス情報はSEOのために載せるものではありませんが、企業側が派遣会社を比較するときの信用材料になります。
法人向けサイトでは、会社概要、許可番号、情報公開ページ、教育訓練、相談窓口など、法令上・実務上必要な情報へ迷わず到達できるようにします。
派遣先開拓のKPIは「就業開始」と「継続」まで追う
新規営業担当だけで数字を見ると、商談数・案件数が中心になります。
しかし派遣事業では、案件を取った後のマッチングと定着まで売上に直結します。
最低限、次のような指標をつなげます。
対象企業 → 接触 → 商談 → 案件 → 人材提案 → 職場見学 → 就業開始 → 1回目更新 → 増員
たとえば、
- 商談は多いが案件が少ない → ターゲットまたはヒアリングに問題
- 案件は多いが提案できない → 登録者との需給ミスマッチ
- 提案は多いが就業しない → 条件・職場情報・マッチングに問題
- 就業するが更新されない → フォローまたは職場適合に問題
と切り分けられます。
「営業力が弱い」と一括りにせず、どこで落ちているかを確認します。
派遣先を増やしたい中小派遣会社の改善手順
Step 1. 現在の登録者・稼働者を職種×地域で集計する
供給できる人材を把握します。
Step 2. 既存派遣先を継続率・粗利・増員で分類する
どんな企業が自社に合っているかを確認します。
Step 3. 開拓対象企業の条件を決める
業種、地域、必要職種、規模、採用シグナルで優先度を付けます。
Step 4. 企業ごとに連絡理由を作る
求人掲載、増員、拠点新設などを確認し、テレアポ・メールの切り口を変えます。
Step 5. 法人向けWebページを整える
営業後にサイトを見られても、対応領域・事例・契約の流れが分かるようにします。
Step 6. 派遣先側とスタッフ側のデータをつなぐ
「案件はあるが人がいない」「人はいるが案件がない」を職種×地域で把握します。
Step 7. Web問い合わせも案件化率まで計測する
問い合わせ数だけでなく、案件化、人材提案、就業開始まで追います。
派遣先開拓チェックリスト
- 登録者が多い職種・地域を把握しているか
- 継続しやすい派遣先の共通条件を把握しているか
- 営業リストを求人中企業だけで作っていないか
- 派遣の利用可能性が高い人員課題を見ているか
- 商談で採用背景・期限・勤務条件まで聞いているか
- 案件数だけでなく提案可能案件率を見ているか
- 初回人材提案までの日数を計測しているか
- 登録スタッフ集客と派遣先開拓を別KPIにしているか
- 法人向けサービスページが求職者ページと分かれているか
- 職種・業界別の強みを企業向けに説明できているか
- 法人問い合わせから就業開始までチャネル別に追えているか
まとめ|派遣先開拓を「テレアポ件数」ではなく需給の設計にする
人材派遣会社の派遣先開拓では、営業量は必要です。しかし件数だけを増やしても、自社の登録人材と合わない案件では売上になりません。
まず、
- どの職種・地域の人材を供給できるか
- どんな企業で継続しやすいか
- 企業のどんな採用課題なら派遣が合うか
- 案件獲得後にどれだけ早く人材を提案できるか
- 就業開始後に更新・増員へつながっているか
を確認します。
そのうえで、テレアポ、メール、求人企業へのアプローチ、紹介、SEO・Web集客を使い分けます。
Webサイトは、アウトバウンド営業とは別物ではありません。営業メールを受けた企業が会社を確認する場所にもなり、検索から新しい派遣先が問い合わせる入口にもなります。
ツリーズコンサルティングでは、人材派遣会社のSEO・Web集客について、登録スタッフ側と派遣先企業側を分け、キーワード、サイト構造、コンテンツ、問い合わせ導線まで設計します。現在のサイトで法人問い合わせを増やせる余地を確認したい場合は、ご相談ください。