人材派遣会社で「人が集まらない」とき、最初に求人広告を増やすとは限りません。
派遣スタッフの集客は、単純な応募数ではなく、
求人・会社を知る → 求人を見る → 応募・仮登録する → 面談する → 仕事紹介を受ける → 就業する
という一連の流れだからです。
求人の露出が少ない会社と、求人は見られているのに応募されない会社では、打つべき施策が違います。応募は来るものの面談につながらない会社、登録者は多いのに稼働しない会社も同じです。
厚生労働省の令和6年度労働者派遣事業報告では、派遣労働者は約220万人、登録者数は約753万人と集計されています。派遣市場そのものが大きい一方で、派遣会社にとっては「登録者数を増やすこと」だけではなく、自社の求人に合う人を集め、面談・稼働までつなげる設計が重要です。
本記事では、人材派遣会社が登録スタッフを増やすために、求人媒体、Indeed、広告、自社サイト、SEOなどをどう使い分けるかを、実務上のボトルネックから整理します。
「人が集まらない」を6段階に分解する
派遣会社の人集めで最も避けたいのは、原因を確認せず「応募が少ないから媒体を増やす」と考えることです。
まず、現在の数字を次の6段階に分けます。
| 段階 | 見る数字 | 主な問題の例 |
|---|---|---|
| 1. 露出 | 表示回数、求人閲覧入口 | 求人や会社が見つかっていない |
| 2. 求人閲覧 | 求人詳細PV、一覧→詳細遷移 | タイトル・職種・条件が弱い |
| 3. 応募・仮登録 | 応募率、登録開始率 | 情報不足、条件不一致、フォーム負荷 |
| 4. 面談 | 面談予約率、面談実施率 | 連絡速度、予約方法、離脱 |
| 5. 仕事紹介 | 紹介率、マッチ率 | 求人と登録者のズレ |
| 6. 稼働 | 就業率、稼働率 | 条件・職場・フォローの問題 |
たとえば検索広告や求人媒体から十分なアクセスがあるのに応募率が低ければ、流入を増やしても費用だけが増えます。
反対に、求人詳細まで進んだ人の応募率は高いのに閲覧数が少ないなら、SEOや求人媒体、広告で入口を増やす余地があります。
「人集め」をひとつの数字で見ないことが最初の改善です。
派遣会社で登録スタッフが集まらない主な原因
1. 求人媒体に載せるだけで、自社の入口が少ない
求人媒体は短期的な応募獲得に有効ですが、掲載している求人以外から自社を見つけてもらう入口は増えません。
求職者は「派遣会社名」で検索する人だけではなく、職種、勤務地、働き方、資格、勤務時間などから仕事を探します。
自社サイトが会社案内と求人一覧だけなら、こうした検索に対応するページが不足しやすくなります。
2. 求人一覧はあるが、検索者が知りたい説明が足りない
派遣サイトでは求人データを大量に掲載できても、一覧と詳細だけでは検索意図を十分に満たせないことがあります。
たとえば「札幌 事務 派遣」を検討している人に必要なのは、現在募集中の求人だけではありません。
- どのような事務職があるか
- 未経験でも応募できるか
- 必要なPCスキルは何か
- 時給や勤務時間はどう見るべきか
- 派遣登録から就業までどう進むか
- その派遣会社にはどんなサポートがあるか
といった情報も判断材料になります。
求人が入れ替わっても残る「職種・地域の入口ページ」を用意すると、求人詳細だけに依存しない検索導線を作れます。
3. 応募前に会社を選ぶ理由が伝わっていない
同じ職種・勤務地・時給帯の求人が複数社から出ていれば、求職者は条件以外も比較します。
- 特定職種に強い
- 担当者のサポートが厚い
- 未経験者向け研修がある
- 給与や福利厚生が分かりやすい
- 登録後すぐ仕事を紹介できる
- 地域で長く運営している
など、自社を選ぶ理由が求人詳細と登録ページに伝わっているか確認します。
会社の強みがコーポレートページだけに書かれていて、求人を見ている人から到達できないケースもあります。
4. 登録フォームの負荷が高い
応募意思がある人でも、最初から入力項目が多いと離脱します。
氏名・連絡先・希望職種など最低限の仮登録から始め、その後にプロフィールや職歴を入力してもらう設計が適する場合もあります。
大切なのは「項目を必ず減らす」ことではなく、この段階で本当に必要な情報かを見直すことです。
5. 応募後の連絡・面談予約で落ちている
Web集客が成功しても、応募後の連絡が遅ければ他社に決まる可能性があります。
応募から初回連絡までの時間、電話がつながらなかった人への再接触、メール・SMS・LINEの使い分け、オンライン面談の予約方法なども計測対象です。
SEOや広告担当者だけでなく、登録対応のオペレーションと一緒に改善する必要があります。
6. 集めている人と求人が合っていない
「登録者数」は増えているのに稼働が増えない場合、集客チャネルと保有求人が合っていない可能性があります。
製造・物流の求人が中心なのに、事務職希望者ばかり集めても成果にはなりません。
広告やSEOの評価は応募数だけでなく、
応募 → 有効登録 → 面談 → 求人紹介 → 稼働
まで追う必要があります。
派遣会社の人集めに使える主な方法
求人媒体
すぐに求人を露出しやすく、急募や採用数が必要なときに使いやすい方法です。
ただし媒体内では他社求人と比較され、掲載を止めれば入口も弱くなります。媒体ごとに応募単価だけを見るのではなく、面談率・稼働率まで比較します。
Indeedなどの求人検索サービス
職種・勤務地・条件で探す人に接触しやすいチャネルです。
一方で、Indeedは2026年3月18日以降、人材紹介会社・派遣会社が掲載する人材紹介求人・派遣求人について有料掲載を必須とする方針を案内しています。つまり「無料掲載があるからIndeedだけで集める」という前提で中長期の集客設計を組むのは危険です。
Indeed内の求人最適化は重要ですが、自社サイトのSEOや他チャネルと分けて役割を設計します。
リスティング広告・求人広告
「地域+職種+求人」のようにニーズが明確な人を短期間で集めるときに有効です。
新しい職種やエリアで応募が取れるか検証する用途にも向いています。
ただし、検索ボリュームの大きな一般語へ広く出稿すると、意図の弱い流入も増えます。職種・地域・条件別にキャンペーンとLPを分け、面談や稼働まで評価します。
SNS・SNS広告
仕事の雰囲気、スタッフの声、職場環境などを視覚的に伝えやすいチャネルです。
検索するほど転職意欲が高まっていない層にも接触できます。ただしフォロワー数そのものをKPIにせず、求人閲覧、登録、面談へどうつなぐかを決めます。
登録会・紹介・既存登録者への再アプローチ
新規集客だけが人集めではありません。
過去に登録したものの現在稼働していない人、以前応募したが条件が合わなかった人へ、新しい求人を適切に案内できれば、新規広告費を増やさず稼働につながることがあります。
既存DBを職種、地域、希望条件、最終接触日などで整理し、再接触の対象を決めます。
自社サイト・SEO
SEOは即効性では媒体や広告に劣りますが、職種・地域・働き方ごとの入口を自社資産として蓄積できます。
特に派遣会社では、求人詳細だけではなく、
- 職種ページ
- 地域ページ
- 職種×地域ページ
- 働き方・条件ページ
- 派遣の仕組み・登録方法
- 仕事選びに役立つ解説
をどう配置するかが重要です。
ただし、地名や職種の組み合わせを機械的に量産するのではありません。実際に求人があり、検索者へ提供できる固有情報があり、独立ページとして価値がある組み合わせから作ります。
求人媒体と自社サイトは「どちらか」ではなく役割を分ける
派遣会社の集客では「求人媒体をやめてSEOにする」という二者択一にしない方が現実的です。
媒体や広告は、
- すぐ応募が必要な求人
- 新しい職種・地域のテスト
- 自社サイトがまだ弱い検索領域
に使います。
自社サイトは、
- 継続的に扱う職種
- 営業エリア
- 自社が強い条件・専門領域
- 派遣会社としての強み
- 登録・就業に必要な説明
を蓄積します。
媒体で成果が良い「職種×地域」が分かれば、そのデータを自社サイトのページ優先順位にも使えます。逆にSearch Consoleで検索表示が伸びている領域があれば、広告費をかける前にページ改善を検討できます。
この循環を作ると、広告とSEOが別部署・別業者で分断されにくくなります。
人材派遣サイトでは「入口ページ → 求人 → 登録」をつなぐ
SEOで重要なのは記事数ではなく導線です。
職種・地域の入口ページを作る
たとえば事務、製造、物流、IT、介護など、自社が継続的に扱う職種について、検索者の疑問に答える入口を作ります。
そのページから現在募集中の求人へリンクし、求人が一時的にゼロになってもページ自体の価値が完全に失われない設計にします。
求人詳細を孤立させない
求人CMSで生成された詳細URLが、サイト内検索からしか到達できない状態は避けます。
職種、地域、条件、関連記事などから求人詳細へ内部リンクを作り、求人詳細からも関連求人や登録へ戻れるようにします。
求人終了後のページ処理も決める
求人が終了したURLを永久に「募集終了」のまま放置したり、逆にすべて即削除したりすると、ユーザーにも検索エンジンにも分かりにくくなります。
GoogleのJobPosting構造化データでは、求人詳細の単一ページへマークアップし、終了求人ではvalidThroughや構造化データ、ページ自体を適切に更新・削除することが案内されています。
求人件数が多いサイトほど、公開時だけでなく終了時の運用ルールまで決める必要があります。
数字を見るなら「応募単価」で止めない
人集め施策を比較するとき、応募単価は分かりやすい指標です。しかし、派遣会社にとって最終成果は応募ではありません。
たとえば、
| チャネル | 応募 | 面談 | 稼働 |
|---|---|---|---|
| A | 多い | 少ない | 少ない |
| B | 少ない | 多い | 多い |
なら、応募単価だけではAが良く見える可能性があります。
少なくとも、
- 応募数
- 有効応募数
- 登録完了数
- 面談実施数
- 求人紹介数
- 就業数
- 稼働後の継続
まで追い、チャネル・職種・地域別に比較します。
自社サイトのSEOも同じです。自然検索から何件応募が来たかだけでなく、どの検索ページから来た人が面談・稼働につながったかを見ると、次に強化すべきページを決めやすくなります。
実例:専門職の人材派遣会社で検索経由応募が1.7倍
ツリーズコンサルティングでは、専門職に特化した人材派遣会社でSEO・Web集客改善を支援しました。
支援前はWeb制作会社とSEO施策を進めていたものの、主要キーワードは上位30位圏外。ページを増やしても、どの検索需要をどのページで受けるのかが十分に整理されていませんでした。
そこで、
- 事業内容と求職者に選ばれる強みを整理
- 検索結果と競合を見てキーワードを選定
- キーワードごとに必要ページを設計
- 各ページで説明する仕事内容・働き方・地域情報を具体化
- 制作会社への実装指示を整理
- 生成AIは機械的な量産には使わず、情報の精緻化や読みやすさの改善などに活用
しました。
その結果、新規ページは公開1か月後に8位、その後3位まで上昇。検索経由の求人応募は前年同期比1.7倍になりました。
この事例で増やしたかったのは「PV」ではなく応募です。そのため、検索順位だけではなく、求職者が検索するテーマ、着地ページ、求人情報、応募導線を一体で設計しました。
小規模な派遣会社なら、最初にこの順で改善する
大手のように広告、SNS、SEO、求人媒体すべてへ同時投資できなくても構いません。
Step 1. どの職種・地域の人が足りないか決める
「登録者を増やす」では広すぎます。
売上につながる求人があり、現在スタッフ不足で機会損失している職種・地域から対象を絞ります。
Step 2. 求人閲覧から稼働まで数字を出す
流入不足か、応募率か、面談率か、稼働率かを確認します。
数字が取れていなければ、まずGA4、Search Console、求人システム、登録管理の数字をつなげられる範囲から整理します。
Step 3. 現在使っている媒体・広告の質を見る
応募数だけでなく、面談・稼働まで比較します。
高コストでも稼働率が高い媒体は残す価値があります。反対に応募が多くても有効登録が少ないチャネルは見直します。
Step 4. 自社サイトの入口を確認する
優先職種・地域について、検索者が直接着地できるページがあるか確認します。
求人一覧しかなければ、まず検索者に必要な情報をまとめる入口ページから検討します。
Step 5. 応募・登録フォームと連絡フローを改善する
アクセスを増やす前に、せっかく来た人を落としていないか確認します。
Step 6. 足りない集客チャネルだけ追加する
急ぎなら媒体・広告。中長期で同じ職種・地域の採用を続けるならSEO・自社サイト。潜在層ならSNSや既存登録者への再接触など、目的に合わせて追加します。
派遣会社の人集めチェックリスト
- 「登録者数」ではなく、必要な職種・地域が決まっているか
- 求人表示→閲覧→応募→面談→稼働を分けて見ているか
- 媒体別に応募単価だけでなく稼働まで比較しているか
- 求人一覧以外に職種・地域の入口ページがあるか
- 求人詳細から関連求人・登録へ移動できるか
- 自社を選ぶ理由が求人詳細にも伝わっているか
- 登録フォームに不要な入力項目がないか
- 応募後の初回連絡までの時間を把握しているか
- 過去登録者・休眠登録者へ再アプローチできるか
- Indeed・求人媒体だけに入口が集中していないか
- Search Consoleで既に表示されている職種・地域を把握しているか
- 求人終了時のURL・構造化データ運用が決まっているか
複数項目が曖昧なら、広告予算を増やす前に集客と登録の構造を整理する余地があります。
まとめ|派遣会社の人集めは「流入を増やす」だけでは改善しない
派遣会社で登録スタッフを増やす方法には、求人媒体、Indeed、広告、SNS、自社サイト、SEO、登録会、既存登録者への再接触などがあります。
しかし、施策を増やす前に、
- どの職種・地域の人が必要か
- どの段階で人が減っているか
- どのチャネルの人が実際に稼働するか
- 求職者が着地できる自社ページがあるか
- 応募後の登録・面談導線に問題がないか
を確認することが重要です。
短期的な応募は媒体・広告で獲得しながら、継続的に採用する職種・地域は自社サイトにも入口を作る。さらに応募後の面談・稼働まで計測する。この組み合わせが、媒体費だけを増やさず人集めを改善する基本になります。
ツリーズコンサルティングでは、人材派遣会社のサイト、求人構成、検索状況を確認し、SEOだけに限定せず「どこが応募・登録のボトルネックか」から改善優先順位を整理します。
求人媒体を増やすべきか、自社サイトを改善すべきか分からない段階でも、まず現在の集客状況を見せてください。