物流会社の新規荷主獲得・新規開拓

「新規荷主を増やしたい」という相談を受けたとき、最初に出てくるのは「営業を強化すべきか」「展示会に出るべきか」「SEOをやるべきか」という手段の話であることが多くあります。

しかし、手段から決めると、施策同士がつながりません。展示会で集めた名刺の業種と、広告で狙っている検索語と、サイトに載っているサービス内容が別々になっている、という状態が起こります。

新規荷主獲得で最初に決めるのは、営業手法ではありません。どの拠点で、どんな案件を増やしたいかです。「千葉の冷凍倉庫の空き坪を埋めたい」のか、「埼玉拠点でEC小ロットの発送代行を増やしたい」のか、「化粧品の流通加工案件を増やしたい」のかで、狙う企業も、営業リストも、出る展示会も、広告で買う検索語も、サイトに用意すべきページも変わります。

この記事では、物流会社・倉庫会社・3PL事業者の新規開拓について、増やしたい案件の決め方、紹介・アウトバウンド・展示会・マッチング・Web広告・SEOの使い分け、Webサイトが果たす役割、成果の見方、優先順位のつけ方までを整理します。

SEOはこの中の一つのチャネルとして扱います。SEOを選んだあとの具体的な設計は「物流会社のSEOキーワード・サイト構造設計」で扱っているため、この記事ではそもそもSEOを選ぶべき状況なのかどうかまでを扱います。

目次

物流会社の新規荷主獲得とは、何を増やすことか

新規荷主獲得は、問い合わせ件数を増やす活動ではありません。

物流の委託では、問い合わせがあっても受託できない案件が一定数発生します。商材が扱えない、温度帯が合わない、拠点が対応エリア外、ロットが小さすぎる(あるいは大きすぎる)、希望する稼働開始時期に間に合わない、システム連携の要件が合わない、採算が合わない、といった理由です。

つまり新規荷主獲得とは、次の条件に合う荷主との接点を増やすことです。

  • 自社が受けたい案件の種類である
  • 自社の設備・拠点・人員で対応できる条件である
  • 採算が合う
  • 稼働余力がある時期に始められる

見るべきは、リード件数そのものではなく案件の適合度です。問い合わせが月10件から30件へ増えても、増えた20件がすべて対応外の商材であれば、営業の対応工数が増えただけという結果になり得ます。

自社で確認すること:最近の新規問い合わせを「受託した」「条件が合わず断った」に分け、断った理由(商材・温度帯・エリア・ロット・時期・価格)を整理してください。この分布が、後述するチャネル選定とサイト改善の出発点になります。

最初に決めるのは営業手法ではなく「増やしたい案件」

「新規荷主を増やす」という目標のままでは、施策を選べません。

たとえば次のように具体化すると、営業先とWeb施策が同時に決まります。

  • 千葉の冷凍倉庫で、食品メーカーの保管・流通加工案件を増やす
  • 埼玉拠点で、EC事業者の小ロット発送代行を増やす
  • 化粧品のセット組み・ラベル貼りなど流通加工案件を増やす
  • 関東エリアで、3PLとしての一括受託案件を増やす

同じ「新規荷主獲得」でも、増やしたい案件が違えば、必要な打ち手は変わります。

増やしたい案件狙う企業の例接点として候補になるものWebで用意しておきたいページ
千葉の冷凍倉庫の保管・流通加工冷凍食品メーカー、食品商社、輸入業者業界展示会、既存荷主・同業からの紹介、冷凍設備を条件にした検索拠点ページ(温度帯・設備・面積)、食品物流のサービスページ
埼玉拠点のEC小ロット発送代行EC事業者、D2Cブランド、EC支援会社検索広告、SEO、カート/OMSベンダー経由発送代行サービスページ(ロット・出荷締め・カート連携)
化粧品の流通加工化粧品メーカー、OEM、輸入代理店展示会、アウトバウンド、包装資材会社経由流通加工サービスページ、商材別ページ、作業実績
関東の3PL一括受託製造業、卸、成長期のEC事業者アウトバウンド、紹介、3PL関連の検索3PLサービスページ、拠点一覧、導入事例

この表は「この案件にはこのチャネル」という固定の対応表ではありません。自社の営業体制、既存の取引関係、拠点の立地によって適した接点は変わります。ここで示したいのは、増やしたい案件が決まらないと、チャネルもページも決められないという順序です。

自社で確認すること:拠点ごとに「いま優先して増やしたい案件」を書き出してください。営業責任者と現場責任者で答えが違う場合は、そこを先に揃えます。

受託条件と稼働余力を先に確認する

増やしたい案件を決めたら、その案件を実際に受けられるかを確認します。

見るのは次のような項目です。

  • 拠点と空き坪(現在と、契約終了予定を含めた今後の見込み)
  • 温度帯(常温・定温・冷蔵・冷凍)と、その区画ごとの空き
  • 入出荷の処理能力(1日あたりの出荷件数、ピッキング体制)
  • 作業人員の確保状況、繁忙期の余力
  • 流通加工の対応範囲(セット組み、ラベル貼り、検品、ギフト包装など)
  • WMS・OMSの機能と、荷主側システムとの連携方式
  • 配送手配の範囲(自社車両、協力会社、宅配便)
  • 採算ライン(坪単価、作業単価、最低受託規模)

この確認を先にする理由は、集客と営業の順序にあります。受託できない条件の問い合わせを集めてしまうと、営業は断る対応に時間を使うことになります。断ること自体は問題ではありませんが、対応外の問い合わせが多い状態が続く場合は、集客対象やサイト上の受託条件が適切かを見直す材料になります。

一方で、確認の結果「いまは余力がないので新規は絞る」という判断になることもあります。それも有効な結論です。

自社で確認すること:拠点別・温度帯別の空き坪と入出荷余力を、今後の契約終了や稼働予定も含めて確認してください。空きが出る時期が分かると、いつまでに案件が必要かという時間軸が決まります。この時間軸が、後述する優先順位の判断に直結します。

新規荷主獲得の主なチャネル

物流会社が新規荷主と接点を持つ経路には、たとえば次のものがあります。

  • 既存顧客・取引先からの紹介:既存荷主、協力運送会社、同業倉庫、金融機関などから案件が回ってくる経路
  • アウトバウンド営業:電話、メール、問い合わせフォーム、DM、訪問など、こちらから接触する経路
  • 展示会・イベント:物流展、食品展、EC関連展など、特定業界が集まる場での接点
  • 業界団体・商工会等:地域や業種の集まりを通じた接点
  • 物流マッチングサービス:倉庫・物流のマッチング事業者や仲介事業者を経由した案件接触
  • Web広告:検索広告を中心に、荷主が検索したタイミングで露出する経路
  • SEO:荷主が検索するサービス・商材・地域・条件に対し、自社サイトを検索結果へ出す経路
  • 自社サイト:どのチャネルで会社を知った相手も確認する共通の受け皿
  • セミナー・資料:課題テーマごとに情報提供して接点を持つ経路
  • パートナー企業:システム会社、EC支援会社、商社、包装資材会社、運送会社、同業倉庫など

このうち「全部やるべき」ということではありません。実際には、営業人員、広告予算、サイトの状態、案件が必要な時期によって、着手できる範囲が決まります。

チャネルごとの向き・不向き

チャネルには優劣はなく、向いている場面が違います。

チャネル向いている場面注意点
紹介信頼が重視される案件、既存荷主と近い業種・商材、条件が複雑で説明に前提共有が必要な案件発生が偶発的で、母数を計画的に増やしにくい
アウトバウンド営業狙う業界・企業が特定できる、特定拠点や特定商材へ集中したい、空きを早く埋めたいリストの精度と提案内容が必要。対象条件を確認しない大量送信では、自社の受託範囲と合わない企業への接触が増える可能性がある
展示会食品・化粧品・EC・製造など、特定業界と短期間で接点を作りたい出展費用と人員、会期後のフォロー体制が必要
物流マッチング短期で商談機会を作りたい、稼働開始時期が迫っている条件と価格の比較になりやすい。対応外条件の案件も混じる
Web広告委託先を探す顕在的な検索が存在する領域、短期間で検証したい広告費に加え、受け皿となるページの内容が結果を左右する
SEO継続的に検索接点を作りたい、複数サービス・複数商材・複数拠点がある立ち上がりに時間がかかる。既存ページの整理が先に必要な場合がある
自社サイト改善他チャネルで会社を知った相手が比較検討する段階、既存の流入があるサイト改善だけでは新規の接点数は増えない。集客は別途必要

この表を「この順に着手すべき」という優先順位として読まないでください。同じ物流会社でも、拠点の立地、扱う商材、営業人員の数、既存の取引構造によって適した組み合わせは変わります。判断材料は次章以降で個別に整理します。

アウトバウンド営業が向いているケース

アウトバウンド営業が候補になるのは、たとえば次のような状況です。

  • 狙いたい業界や企業がある程度特定できている(冷凍食品メーカー、化粧品OEM、成長期のEC事業者など)
  • 新倉庫の立ち上げや契約終了で、特定拠点の空き坪を早く埋めたい
  • 特定地域・特定商材に集中して営業したい
  • 既存の営業リストや過去の商談履歴が残っている

一方で、大量にメールやフォーム送信をすることは、ここでいう営業とは異なります。物流の委託では、商材・物量・温度帯・エリアなどの条件が合うかどうかが、検討を進めるうえで重要な前提になります。条件を確認せずに送る接触は、返信率以前に、対象がずれている可能性があります。

対象企業を絞るときに見るのは、たとえば次のような情報です。

  • 企業規模、拠点の所在地、事業エリア
  • 扱っている商材(温度帯、荷姿、サイズ、ロット)
  • ECを展開しているか、自社ECか、モール中心か
  • 新工場・新商品・新ブランドなど、物量が動く可能性のある動き
  • 採用情報に物流・在庫管理の職種が出ているか
  • 出荷が特定時期に集中する商材か(季節性、ギフト需要)

これらは「物流の見直しが起きているかもしれない」というシグナルであって、確実な兆候ではありません。それでも、なぜこの会社に連絡するのかを1社ずつ説明できる状態にしておくことで、初回接触の内容が具体的になります。「弊社は物流全般に対応しています」ではなく、「冷凍の小ロット出荷に対応できる拠点が千葉にあります」という接触になります。

自社で確認すること:これまで受注できた荷主に共通する属性(業種、商材、出荷ロット、エリア、依頼のきっかけ)を書き出してください。その属性を検索条件にして企業リストを作れるなら、アウトバウンドは候補になります。共通点が見つからない場合は、まず増やしたい案件の定義に戻ります。

展示会・紹介・パートナー経由をどう使うか

展示会

展示会は、食品、化粧品、EC、製造業など、特定業界へ集中して接点を作りたい場合に候補になります。荷主側の担当者と直接話せるため、条件のすり合わせが早い場合があります。

ただし、出展しただけで案件になるとは限りません。実務では次の流れを事前に設計しておく必要があります。

事前ターゲットの設定

会期中の接点(何を見せて、何を聞くか)

名刺・ヒアリング内容の記録

会期後のフォロー(誰が、いつ、何を送るか)

提案・見積

ブースで見せる内容も、会社紹介パネルだけでは判断材料になりません。温度帯別の設備、拠点の所在地と面積、作業工程の写真、WMSの画面、対応できるロットや出荷締め時間など、荷主が自社との適合を判断できる情報が候補になります。

自社で確認すること:前回出展時に交換した名刺のうち、その後に商談へ進んだ件数と、進まなかった理由を確認してください。フォローが行われていなかった場合、出展内容より先にフォロー体制を整える判断になります。

紹介

紹介は、信頼を得た状態で商談が始まるため、受注までが早い場合があります。既存荷主から同業他社へ、協力運送会社から荷主へ、といった形で発生します。

ただし発生が偶発的で、必要な時期に必要な数の案件が来るとは限りません。紹介を主要チャネルとして計画に組み込むときは、この点を前提に置きます。

紹介が起きやすくするためにできることとして、既存荷主への定期的な状況共有、対応可能になった新しい設備・拠点の案内、同業・協力会社への受託範囲の共有などがあります。ただし、これらを行えば紹介が増えると断定はできません。

パートナー企業

荷主と接点を持つ企業と連携する方法です。たとえば次のような相手が候補になります。

  • 基幹システム・WMS・OMSのベンダー
  • ECカート・EC支援会社
  • 商社、卸
  • 包装資材会社
  • 運送会社
  • 同業の倉庫会社(エリアや温度帯を補完し合う場合)

自社が対応できない条件(エリア外、温度帯が合わない、規模が合わない)の案件を融通し合う関係になることもあります。ただし、パートナーを作れば案件が増えるとは限りません。相手側にとっても紹介する理由が必要です。

物流マッチングサービスの使い方

倉庫・物流のマッチングサービスは、短期間で商談機会を作りたい場合に候補になります。

利点として考えられるのは、次の点です。

  • すでに委託先を探している荷主の案件に接触しやすい
  • 自社の集客基盤がなくても、短期で商談機会を作れる場合がある
  • どのような条件の案件が動いているかを把握できる場合がある

一方、注意点もあります。

  • 複数社が同じ案件に対して提案するため、条件と価格の比較になりやすい
  • 自社の対応範囲外の条件の案件も含まれる
  • 案件がプラットフォーム上で完結するため、自社の認知やブランドが蓄積しにくい

ここで「マッチングは避けるべき」という結論にはなりません。空きが出る時期が迫っている、特定の区画を短期で埋めたい、といった状況では有効な選択肢です。

判断としては、短期の案件獲得自社チャネルの形成を分けて考えます。マッチングは前者に効く可能性がありますが、後者は別途進める必要があります。マッチングサービスでは複数社比較になりやすいため、自社独自の検索接点や認知を継続的に作りたい場合は、自社サイトや他チャネルも別途検討します。

また、価格以外で説明できる条件(冷凍設備、立地、流通加工の対応範囲、出荷締め時間、繁忙期の増員体制など)があるかどうかで、マッチング上での立ち位置は変わります。

自社で確認すること:マッチング経由で受注した案件について、採算ラインを満たしていたか、契約が継続したかを確認してください。単発で終わっている場合は、その理由(価格、条件、対応範囲)を整理します。

Web広告が向いているケース

検索広告は、委託先を探す検索がすでに存在する領域で候補になります。

たとえば次のような検索です。

  • 冷凍倉庫 千葉
  • EC物流 委託
  • 発送代行 小ロット
  • 3PL 費用
  • 流通加工 委託

これらの検索がどの程度あるか、どのようなページが並ぶかは領域によって異なるため、実際の検索結果と広告管理画面のデータで確認します。

ただし、広告を出せば問い合わせが来る、とは言えません。物流委託の検討では、案件によって複数社を比較したり、社内で複数の担当者が確認したりする場合があります。広告経由でサイトへ来た荷主が、自社の条件に対応できるか判断できる情報が不足していると、問い合わせや比較検討へ進みにくい可能性があります。

判断のために見るのは次のような項目です。

  • 対象領域に検索需要があるか
  • クリック単価(CPC)と、想定される案件単価・粗利の関係
  • クリック後に見せるページ(サービスページ、拠点ページ、LP)の内容
  • 問い合わせフォームの項目と負荷
  • 実際に来た問い合わせの内容(商材、物量、エリア、温度帯)
  • 商談化したか、受注したか

ここで固定のCVRやCPAの目安は示しません。物流の委託は案件単価も契約期間も企業ごとに大きく異なり、業界共通の基準として扱える数値ではないためです。自社の案件単価、粗利、契約継続期間から、許容できる獲得コストを自社で計算します。

自社で確認すること:広告の受け皿にしているページを開き、温度帯・対応ロット・対応エリア・システム連携・最短の稼働開始時期が書かれているかを確認してください。書かれていない場合、広告の前にページを整える判断になります。

Web上のチャネル全般の使い分けは「物流会社のWeb集客」で扱っています。

SEOが向いているケース、向きにくいケース

SEOは、検索接点を継続的に蓄積する方法です。この記事の中では、時間をかけてよい場合に効く選択肢という位置づけになります。

SEOが候補になりやすい状況

  • 特定案件だけでなく、継続的に新規荷主を探し続ける必要がある
  • 提供サービスが複数ある(保管、庫内作業、流通加工、配送、3PL一括受託など)
  • 対応商材が複数ある(食品、化粧品、アパレル、日用品、機械部品など)
  • 拠点が複数あり、地域ごとの検索を受けられる
  • 荷主が検索で委託先を探している領域である(実際の検索結果に事業者のサービスページが並ぶ)
  • 設備、作業実績、対応条件など、サイトに蓄積できる情報がある

SEOが優先されにくい状況

  • 営業対象が極端に限定されている(特定業界の数十社など)
  • 対象領域の検索需要がほとんど確認できない
  • 既存の数社との取引で稼働がほぼ埋まっている
  • 数か月以内に特定拠点の空き坪を埋める必要がある

最後のケースが特に重要です。SEOは、ページを作ってから検索結果での評価が安定するまでに時間がかかります。短期間で案件獲得が必要な状況では、SEOだけに依存せず、即時に接点を作れるチャネルもあわせて検討します。その場合はアウトバウンド、紹介、マッチング、広告を先に検討し、SEOは並行して中長期の準備として進める形になります。

なお、当社では荷主側の検索キーワード500件について、代表的な検索結果を確認しながら253の検索テーマへ整理し、そこから46のページ母型として整理しています。これは「46ページを作れば成果が出る」という意味ではありません。自社の受託範囲と拠点に関係する母型だけを選ぶための整理です。

SEOの全体像は「物流・倉庫会社のSEO対策完全ガイド」、検索需要をどのURLで受けるかという設計は「物流会社のSEOキーワード・サイト構造設計」で扱っています。

自社で確認すること:増やしたい案件の条件をそのまま検索語にして(例:「冷凍倉庫 千葉」「発送代行 小ロット」)、実際の検索結果を見てください。事業者のサービスページや拠点ページが並んでいるか、比較サイト・ポータル・物件サイトが占めているかで、SEOで受けられる余地は変わります。

荷主は何を検索しているのか

SEOを検討する場合、荷主側の検索は次の組み合わせで整理できます。

サービス × 商材 × 地域 × 条件

たとえば次のような検索です。

  • EC物流(サービス)
  • 食品物流(サービス×商材)
  • 冷凍倉庫 千葉(設備×地域)
  • 発送代行 小ロット(サービス×条件)
  • 3PL 関東(サービス×地域)

ただし、この組み合わせをすべてページ化するわけではありません。同じ検索テーマを複数ページで受けると役割が重複します。どの検索をどのページで受けるかは、実際の検索結果に並ぶページの種類を確認して判断します。

具体的な設計手順はで扱っているため、この記事では扱いません。

自社サイトは「営業資料」でもある

Webサイトは、SEOで流入を得るためだけの媒体ではありません。

アウトバウンド、展示会、紹介、広告などで会社を知った担当者が、その後に会社名を検索したり、Webサイトでサービス内容を確認したりすることがあります。案件によっては、物流部門に加えて購買、情報システム、経営層など複数の関係者が検討に関わることがあります。その際、Webサイトの情報が社内確認の材料になる場合もあります

このとき見られるのは、会社概要や沿革だけではありません。自社の商材を扱えるのか、必要な作業を任せられるのか、拠点が使えるのか、という適合の判断材料です。

つまり、SEOに取り組まない判断をした会社でも、サイトを整える意味があります。営業活動で作った接点が、サイトの内容で止まる可能性があるためです。

サイト全体を問い合わせにつなげる改善は「物流会社のホームページ改善」で扱っています。

自社で確認すること:営業担当者に「商談前に相手がサイトのどこを見ていたか」「サイトを見て何を聞かれたか」を確認してください。同じ質問が繰り返し出ている場合、その情報がサイトに書かれていない可能性があります。

新規荷主がサイトで確認すること

荷主が委託先を検討するときに確認する項目には、たとえば次のものがあります。

  • 自社の商材に対応できるか(食品、化粧品、アパレル、機械部品、危険物など)
  • 温度帯(常温、定温、冷蔵、冷凍)
  • 対応できる物量・保管量
  • 出荷ロット(小ロット対応の可否、最低受託規模)
  • 庫内作業の範囲(検品、ピッキング、セット組み、ラベル貼り、ギフト包装、返品処理)
  • WMS・OMSの機能と、荷主側システム・ECカートとの連携方式
  • 配送の範囲と手段、出荷締め時間、当日出荷の可否
  • 拠点の所在地、面積、設備、入出荷バース
  • 該当する場合の許認可・認証(食品衛生、医薬品、危険物、輸出入関連など)
  • 導入事例(業種、扱った商材、対応した課題)
  • 問い合わせ方法と、稼働開始までの流れ

「高品質」「柔軟に対応」「ワンストップ」といった表現だけでは、荷主は適合を判断できません。判断に使えるのは条件の記載です。

サービスページに何をどう書くかは「物流会社のサービスページSEO」で扱っています。

空き坪・稼働率から逆算する場合

倉庫会社では、既存荷主の撤退、契約終了、新棟の立ち上げ、季節変動によって空きスペースが発生します。この状況では、時間軸が明確なぶん、判断もしやすくなります。

注意したいのは、荷主は「空き坪」と検索するとは限らない点です。荷主が探しているのは、自社の商材を預けられる委託先です。

そのため、次のように翻訳します。

空きスペース → 提供できる物流サービス → 獲得したい荷主 → その荷主が使う検索語

たとえば「千葉の冷凍区画が300坪空く」であれば、「冷凍倉庫 千葉」「食品 保管 委託」「冷凍 3PL」といった検索や、冷凍食品を扱うメーカー・商社へのアウトバウンドが候補になります。

稼働開始までの期間が短い場合、SEO単独では時期に間に合わない可能性があります。営業・紹介・マッチング・広告を並行して検討し、SEOは次の空き発生に備えた準備として進める、という組み合わせになることがあります。

空き坪を起点とした獲得の進め方は「空き倉庫・空き坪の荷主獲得」で扱っています。

「問い合わせ件数」だけで評価しない

新規開拓の成果を問い合わせ件数だけで評価すると、判断を誤ることがあります。

たとえば、施策後に問い合わせが20件あったとします。そのうち18件が対応外の商材、対応エリア外、極端に小さいロットだった場合、成果が出たとは言いにくい状態です。営業が断る対応に時間を使い、社内では「問い合わせは増えたのに受注が増えない」という認識になります。

そのため、次の段階まで確認します。

  • 問い合わせ件数
  • そのうち自社の受託条件に合う件数(適合案件)
  • 商談へ進んだ件数
  • 見積提出まで進んだ件数
  • 受注
  • 粗利
  • 契約の継続性

すべての会社がCRMで一気通貫に追えるとは限りません。その場合でも、問い合わせ台帳に「商材・物量・エリア・温度帯・結果・断り理由」を記録するところから始められます。この記録があると、次のような切り分けができます。

状態考えられること確認する場所
問い合わせは来るが、対応外案件が多い受託条件がサイトや広告文に書かれていない可能性サービスページの条件記載、広告のキーワードと広告文
問い合わせは少ないが、商談化率は高い接点の数が足りていない可能性チャネルの数と、対象領域の検索需要
商談まで進むが受注に至らない提案内容、価格、競合との比較条件見積プロセス、提案資料、断られた理由の記録
特定チャネルからの案件だけ継続率が低いそのチャネルで来る案件の性質チャネル別の契約継続期間

この表は原因を特定するものではなく、次にどこを見るかを決めるためのものです。

自社で確認すること:問い合わせ台帳に断り理由の欄があるか確認してください。ない場合は、この欄を追加することが最初の改善になります。

営業とWebを同じ導線として扱う

営業担当者は、Web側では分からない情報を持っています。

  • 荷主からよく聞かれる質問
  • 条件が合わずに断ることになった理由
  • 受注につながりやすい商材や案件の型
  • 競合と比較されるときの論点
  • 決裁までに関わる部署

この情報は、サービスページの記載項目、FAQ、記事のテーマ、広告文、SEOで狙う検索語へ反映できます。

逆に、Web側から営業へ渡せる情報もあります。どの検索語で流入しているか、どのページを経由した問い合わせが多いか、問い合わせフォームでどの項目が入力されているか、といった情報です。

問い合わせ内容と断り理由を、営業・Web担当で定期的に共有する運用を作ると、サイトや集客施策の改善材料として使いやすくなります。担当が分かれていても、荷主から見れば一連の検討プロセスです。

優先順位をどう決めるか

チャネルの優先順位は、次の判断軸で決まります。

  • いつまでに案件が必要か(最も影響が大きい)
  • 狙う企業を特定できるか
  • 対象領域に検索需要があるか
  • サイトに受け皿となるページがあるか
  • 営業人員の数と、フォローにかけられる工数
  • 広告に使える予算
  • 案件の採算と契約期間
  • 現在の空き坪・稼働率
  • 長期的に自社チャネルを作りたいか

このうち時間軸が決まると、選択肢が絞られます。

案件獲得の時間軸主に検討するチャネル並行して進めておくこと
短期で案件接点が必要アウトバウンド、紹介、マッチング、検索広告などサービス・拠点ページの受託条件を確認する
一定期間をかけて接点を増やす展示会、パートナー連携、広告、アウトバウンド等を状況に応じて組み合わせるサービスページ・拠点ページを整える
中長期で自社の検索接点を蓄積SEO、コンテンツ、サイト構造の整備営業で得た質問・断り理由をWebへ反映する

短期間で千葉の冷凍倉庫の空きを埋める必要があるのであれば、SEOだけに依存するより、アウトバウンド、紹介、マッチング、広告など即時に接点を作りやすいチャネルも候補になります。SEOは同時に着手するとしても、成果を期待する時期を分けて考えます。

「中長期で継続的に新規荷主との接点を増やしたい」のであれば、SEOとサイト整備が候補に入ります。

なお、複数チャネルを同時に始めることが常に正しいわけではありません。営業人員が少ない場合、展示会と広告とSEOを同時に始めてフォローが追いつかなくなることがあります。着手できる数は、フォローできる工数で決まります。

進め方の一例

進め方の一例として、次の流れがあります。工程数や順序は自社の状況によって変わるため、固定の手順として扱わないでください。

  1. 増やしたい案件を、拠点・温度帯・商材・ロットまで具体化する
  2. 受託条件と稼働余力、採算ラインを確認する
  3. その案件を持っていそうな企業・業界を整理する
  4. いつまでに案件が必要かを決める
  5. 時間軸と体制からチャネルを選ぶ
  6. サイトの受け皿(サービスページ、拠点ページ)に条件が書かれているかを確認する
  7. 施策を実行する
  8. 問い合わせ内容と商談結果を記録する
  9. 断り理由をもとに、チャネルとページを見直す

実際には、6の段階でサイトの記載が不足していることが分かり、7より先に修正が必要になる場合があります。

新規荷主獲得でよくある失敗

ターゲットを決めずに「荷主募集」と打ち出す

何でも受けられるという表現になり、荷主側は自社の条件に合うかを判断できません。結果として、対応外の問い合わせと、判断されないままの離脱が同時に増えます。

確認すること:サイトのトップページとサービスページに、対応できる商材・温度帯・ロット・エリアが書かれているか。

空き坪を埋めることだけを考える

短期的に埋まっても、採算が合わない条件や、繁忙期に他の荷主の作業を圧迫する条件で契約すると、後から負担になります。

確認すること:検討中の案件が採算ラインを満たすか、契約期間と繁忙期の重なりはどうか。

営業チャネルを一つに依存する

紹介だけ、広告だけ、といった状態では、その経路が止まったときに代替がありません。ただし、すべてのチャネルを持つべきということではありません。フォローできる範囲で、依存度を把握しておくことが目的です。

確認すること:最近の受注が、どのチャネル経由だったかを整理する。

展示会後にフォローしない

会期中の接点は、フォローがなければ記憶に残りません。名刺が社内に残っているだけの状態になります。

確認すること:前回の名刺リストに対し、誰が、いつ、何を送ったかの記録があるか。

Web広告を出しているがサイトが弱い

クリック後に見るページに条件が書かれていなければ、判断材料が不足したまま離脱します。広告費だけが消化されます。

確認すること:広告の遷移先ページに、温度帯・ロット・エリア・システム連携・稼働開始時期が書かれているか。

SEO記事だけを量産する

情報記事を増やしても、受け皿となるサービスページや拠点ページが弱ければ、検討段階の荷主が判断できません。記事とサービスの関係が切れていると、記事は記事のまま終わります。

確認すること:既存記事から、関連するサービスページへの導線があるか。

Webサイトが会社案内のまま

沿革、経営理念、拠点住所は載っているが、何をどこまで受託できるかが書かれていない状態です。営業や紹介で作った接点が、ここで止まる可能性があります。

確認すること:サービスページが、業務内容の列挙で終わっていないか。

問い合わせ件数だけで評価する

件数が増えても、対応外案件ばかりでは営業工数が増えます。件数の増減だけでは、施策の良否を判断できません。

確認すること:問い合わせを適合・非適合に分けて記録しているか。

対応外の問い合わせが多いのにサイトを変えない

対応外の問い合わせが続くのは、受託条件が伝わっていないというサイト側のシグナルでもあります。営業側で断り続けるだけでは、同じ問い合わせが繰り返されます。

確認すること:繰り返し発生している断り理由について、サイト上で事前に判断できる情報を出せないか確認する。

まとめ

物流会社の新規荷主獲得では、営業手法を選ぶ前に決めることがあります。

どの拠点で、どんな荷主の、どんな案件を増やしたいかです。

そのうえで、紹介、アウトバウンド営業、展示会、マッチング、Web広告、SEOを、案件が必要な時期と自社の体制に合わせて使い分けます。どれが優れているという順位はありません。SEOはその中の一つのチャネルであり、時間をかけられる場合に候補になります。

ただし、どのチャネル経由で会社を知った荷主も、Webサイトを確認する可能性があります。サービス、商材、温度帯、拠点、設備、対応条件、実績が分かる状態にしておくことは、SEOに取り組むかどうかとは別に意味があります。

接点 → Webサイト → 問い合わせ → 商談 → 受注

この流れを一つのプロセスとして見て、問い合わせ件数ではなく、自社が受けたい案件の受注につながっているかで判断します。

FAQ

Q. 新規荷主を増やしたいのですが、何から始めればよいですか?

営業手法を選ぶ前に、どの拠点でどんな案件を増やしたいかを具体化します。「千葉の冷凍倉庫で食品の保管・流通加工を増やす」まで決まると、狙う企業、使うチャネル、必要なページが決まります。

Q. SEOと営業のどちらを優先すべきですか?

いつまでに案件が必要かによります。数か月以内に空き坪を埋める必要がある場合、SEO単独では時期に間に合わない可能性があります。継続的に接点を増やしたい場合は、SEOが候補になります。どちらか一方に決める必要はなく、期待する成果の時期を分けて考えます。

Q. 物流マッチングサービスは使わない方がよいですか?

そうとは限りません。短期で商談機会を作りたい場合には有効な選択肢です。ただし条件と価格の比較になりやすいため、短期の案件獲得と、自社チャネルの形成は分けて考えます。

Q. 問い合わせは増えたのに受注が増えません。

問い合わせを、自社の受託条件に合うもの/合わないものに分けて集計してください。対応外が多い場合は、受託条件がサイトや広告文に書かれていない可能性があります。商談まで進んで受注に至らない場合は、提案内容や価格条件の側を確認します。

Q. 展示会は出る価値がありますか?

特定業界へ集中して接点を作りたい場合には候補になります。ただし出展費用と人員に加え、会期後のフォロー体制が必要です。前回の名刺に対してフォローが行われていない場合は、出展内容より先にフォロー体制を整える判断になります。

Q. SEOをやらないなら、Webサイトは改善しなくてよいですか?

改善する意味はあります。営業、展示会、紹介、広告で会社を知った担当者も、後からサイトを確認します。受託条件が書かれていなければ、その段階で検討が止まる可能性があります。

Q. 複数チャネルを同時に始めるべきですか?

必ずしもそうではありません。フォローできる工数を超えると、どのチャネルも中途半端になります。着手できる数は営業体制で決まります。

新規荷主獲得をご相談ください

ツリーズコンサルティングでは、物流・倉庫・3PL会社の新規荷主獲得について、増やしたい案件の整理、荷主側の検索需要の整理、サイト構造とサービスページの設計、問い合わせ導線の設計を支援しています。

次のような段階からご相談いただけます。

  • 増やしたい案件は決まっているが、どこから接点を作るか判断したい
  • 問い合わせはあるが、対応外の案件が多い
  • 空き坪を埋めたいが、どのチャネルを使うか決めきれない
  • 営業で得た情報がWebサイトへ反映されていない
  • SEOに取り組むべき状況なのかどうかを判断したい

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