物流会社のSEOを外部に依頼するとき、多くの方が知りたいのは「どれくらい成果が出るか」よりも先に、「この会社は実際に何を見て、何を判断するのか」ではないでしょうか。
この記事では、ツリーズコンサルティングが大手BtoB物流企業のサイトに対して行ったSEO支援を、企業が特定できない形に匿名化して紹介します。
中心に扱うのは、施策の結果そのものではありません。サイトの何を調べ、どこを改善対象とし、何をあえて触らず、どういう順番で実行したかという、意思決定のプロセスです。
この事例の読み方
最初に、この記事の性格をはっきりさせておきます。
これは「SEO成功事例」ではありません。
支援の結果として、検索面での改善傾向が確認できたテーマもあれば、改善が確認できなかったテーマ、実装が後回しになった施策もありました。その両方を含めて記録しています。
また、クライアント保護のため、以下は一切記載しません。
- 企業名、担当者名、サイトURL
- 具体的なキーワード、検索順位、流入数、コンバージョン数
- 記事タイトル、支援時期
数値がないぶん、読者にとっての価値は「何が起きたか」ではなく「どう判断したか」に置いています。自社サイトの状況に照らして読んでいただくことを想定しています。
支援開始時の状態|「記事がないから量産する」案件ではなかった
対象は、大手のBtoB物流企業です。
サイトには物流サービスの説明に加え、物流に関連する専門テーマの記事が多数公開されていました。想定読者は、荷主企業の物流担当者や関連業務の担当者です。
Webマーケティング上の目的は、自然検索からの流入を増やし、ホワイトペーパーのダウンロードを含むリード獲得につなげることでした。
重要なのは、支援開始時点ですでに次のものが揃っていたことです。
- 複数の専門記事
- 導入事例
- ホワイトペーパー
- サービス説明ページ
つまり「コンテンツが何もないので記事を大量に追加する」という案件ではありませんでした。すでに検索上位を獲得している記事も存在していました。
一方で、同じサイトの中に、状態の大きく異なる記事が混在していました。
| 状態 | 内容 |
|---|---|
| 良好 | すでに十分な検索順位を獲得している |
| ズレ | 当初狙っていたキーワードと、実際に順位・流入が確認されたキーワードが異なる |
| 未達 | 検索需要は大きいが順位が低い |
| 不適合 | 検索意図と記事内容が合っていない |
| 優先度低 | 検索需要やSERPの性質から、そもそもSEO対象として優先度が低い |
この混在こそが、最初に取り組むべき課題でした。全記事を一律にリライトするのではなく、どの記事を改善し、どの記事は触らないかを決める必要があったからです。
最初に行ったのは、既存記事の棚卸しと分類
そこで着手したのが、既存記事の棚卸しです。
記事ごとに、主として次の項目を確認しました。
- 現在狙っているキーワード
- 現在の検索順位
- 実際の自然検索流入
- 検索需要の大きさ
- 当初のターゲットキーワードと、実際に順位・流入が確認されたキーワードの一致/不一致
- 検索結果上位ページの内容
- 記事内容と検索意図の適合性
- 改善余地の有無
- リライトの優先順位
この確認を踏まえて、既存記事を大きく4つに分類しました。
- すでに評価されており、当面リライト不要
- 改善余地がある
- ターゲットキーワードと記事内容のズレが大きい
- 検索意図やSERPの捉え方から見直す必要がある
この分類が、以降のすべての判断の土台になります。
逆に言えば、この棚卸しを飛ばすと「とりあえず全記事リライト」か「とりあえず新規記事追加」しか選択肢がなくなります。どちらもリソースの使い方としては非効率です。
自社サイトで同じ棚卸しを行う場合の確認項目は、物流会社のSEOチェックリストにまとめています。
「すでに上位の記事は触らない」という判断
棚卸しの結果、すでに十分な検索順位を獲得している記事が複数ありました。
これらは、基本的に現状維持としました。
「SEO施策を依頼したのだから全記事をリライトする」という進め方は採用していません。理由は単純です。
SEOで重要なのは施策の量ではなく、改善余地のあるページにリソースを集中させることだからです。
すでに上位にある記事をリライトしても、期待できる伸びしろは限られます。むしろ、検索意図との適合が取れている記事に手を入れて、順位を落とすリスクもあります。
この案件でも、記事制作やサイト改善に使える社内リソースには限りがありました。だからこそ、限られた制作・編集リソースを、改善期待値の高いページへ優先的に配分する必要がありました。
「何をやるか」を決めることと同じくらい、「何をやらないか」を決めることが重要です。
狙っていたキーワードと、実際に流入が確認されたキーワードのズレ
既存記事の一部では、当初設定したターゲットキーワードと、記事に実際に書かれている内容が一致していませんでした。
また、設定したターゲットキーワードとは別の関連語で、順位や流入が確認されるケースもありました。
こうしたズレが見つかったとき、避けるべき対処があります。キーワードを本文へ機械的に追加することです。
語を足しても、記事が答えている内容そのものが変わらなければ、検索意図との距離は縮まりません。
そこで、次の3点を順に確認しました。
- そのキーワードで検索する人は、何を知りたいのか
- 現在のSERP上位ページには、何が書かれているか
- 既存記事は、その検索意図に答えられているか
検索意図とのズレが大きい記事については、部分的な修正ではなく、次のような踏み込んだリライトを提案しています。
- 記事テーマそのものを変更する
- タイトルを変更する
- 構成を組み替える
- 不足しているトピックを追加する
- 検索意図と関係の薄い内容を削る
最後の「削る」は見落とされがちですが、重要です。記事は足すほど良くなるわけではありません。関係の薄い内容が多いほど、その記事が何のページなのかが曖昧になります。
キーワードをどう検索テーマへ整理し、どのURLを主担当にするかは、物流会社のSEOキーワード・サイト構造設計で解説しています。
SERPを確認し、何を足し何を削るかを決める
リライト対象の記事では、代表的な検索結果上位ページを確認しました。
目的は、上位ページの文章を参考に書き換えることではありません。その検索をしている人が、どのような情報を求めているかを把握することです。
具体的には、次の点を確認しています。
- 上位ページで共通して扱われているテーマ
- 自社記事に不足しているテーマ
- 自社記事にしか書けない一次情報
- 記事タイトルの付け方
- 冒頭文の構成
- 見出し構成
- 情報の粒度
そのうえで方針としたのは、上位ページに共通する内容を押さえつつ、物流企業として保有している専門知識・実務経験・事例といった一次情報を上乗せすることでした。
上位ページに共通する内容だけを揃えても、検索する人から見れば「他と同じことが書いてある記事」にしかなりません。物流会社の場合、現場の運用知識、荷主対応の経験、設備や体制に関する具体性が、他社には書けない差分になります。
この一次情報をどう引き出すかは、実務上いちばん手間のかかる部分です。営業担当や現場担当へのヒアリングが不可欠になります。
記事品質の改善|タイトル・見出し・読みやすさ
記事単位では、基本的なSEO項目も確認しました。
- ターゲットキーワードが、記事タイトルで分かりやすく使われているか
- 重要語がタイトルの前半に配置されているか
- タイトルが過度に長くないか
- meta descriptionが記事内容を正しく説明しているか
- H1が適切か
- H2、H3などの見出し構造が整理されているか
ただし、この案件で無視できなかったのは、SEO項目よりも文章の読みにくさでした。
複数の記事で、次のような状態が見られました。
- 一文が長い
- 一文の中に複数の主語・述語がある
- 一つの段落に複数の話題が混在している
- 専門用語が連続している
- 接続詞が少なく、文と文の関係が分かりにくい
- 代名詞が多く、何を指しているか分かりにくい
- 一つの章が長く、流し読みでは内容を把握できない
物流領域の記事は、専門用語と制度の説明が続きやすく、この状態に陥りがちです。
そこで、次の改善も提案しました。
- 一文を短くする
- 段落を小さく分ける
- 小見出しを増やす
- 章の冒頭に導入文を置く
- 専門用語には必要な説明を加える
- 表・リスト・図を使う
SEO記事であっても、優先すべきは検索エンジン向けにキーワードを入れることではありません。ターゲット読者が理解できる文章であることです。検索上位を獲得しても、内容を十分に理解してもらえなければ、その先のサービス理解やリード獲得にはつながりにくくなります。
サイト共通部分とテンプレートの診断
改善対象は個別記事だけではありませんでした。サイト共通部分も診断しています。
主な検討項目は次のとおりです。
| 分類 | 項目 |
|---|---|
| 基本情報 | title、meta description、H1、見出し構造、画像alt |
| 日付 | 公開日、更新日 |
| 回遊 | 目次、カテゴリ、カテゴリ一覧ページ、ページャー、内部リンク、パンくず |
| 転換 | CTA |
| 表示 | モバイル表示、本文幅、行間、1段落あたりの文章量 |
このうち、構造上の問題として確認されたのがH1の扱いです。
サイト全体でロゴ画像などにH1が設定されており、1ページに複数のH1が存在する状態になっていました。複数のH1があること自体を順位低下の直接原因と断定するものではありませんが、ページの主題やHTML構造を明確にする観点から、テンプレートを整理する方針としました。これは記事本文の修正では解決できないため、テンプレート側の修正としてその旨を提案しています。
つまり、「記事本文だけ直して終了」ではなく、記事テンプレート・サイト構造・UIまでを改善対象としました。
サイト全体の作りから見直す場合の考え方は、物流会社のホームページ改善で扱っています。
情報記事とサービスページの役割を分け、内部リンクでつなぐ
既存記事は、それぞれが単独のページとして存在していました。関連するテーマ同士が十分につながっていない部分があったということです。
そこで、次のサイト構造の改善を検討しました。
- 記事へ適切なカテゴリを設定する
- カテゴリ一覧ページを用意する
- 関連記事同士を内部リンクでつなぐ
- 記事本文から関連サービスへ自然にリンクする
- 記事群から重要なサービスページへの導線と関連性を明確にする
内部リンクは、単に数を増やせばよいものではありません。重視したのは、その文章を読んだ人が、次に知りたいページへ自然に移動できることです。
そしてこの案件で、より本質的だったのが情報記事とサービスページの役割整理でした。
支援サイトには、専門用語や制度を解説する情報記事が多数ありました。しかしSEOの目的は記事のPVではなく、物流サービスへの関心とリード獲得です。
そのため、次の導線を意識しました。
情報記事
↓
関連するサービス・ソリューションページ
↓
資料ダウンロード・問い合わせ
記事SEOとサービスページSEOを別々の施策として扱うのではなく、サイト全体のユーザー導線として設計する必要があると判断しています。
今回のサイトでも、情報記事とサービスページをどう接続するかが重要な論点になりました。記事とサービスページは、社内での管理主体や制作の経緯が異なることがあり、意識して設計しなければ別々のまま残りやすい部分です。
サービスページ側に何を書くかは物流会社のサービスページSEO、情報記事側の設計は物流会社のコンテンツSEOで解説しています。
主要ページ同士の内容重複の整理
個別記事の改善に加え、トップページと主要サービスページについてもSEOを検討しました。
進め方は次のとおりです。
- 検索市場のなかで、そのページが狙うべき中心テーマを決める
- title、meta description、H1、H2、本文に、そのテーマが自然に伝わる情報を配置する
この過程で確認されたのが、主要ページと、それを説明する別ページの内容が大きく重複しているケースでした。
同じ検索意図を満たすページが複数ある場合、検索結果にどのURLを出したいのかが不明確になり、自社内の複数ページが同じ検索テーマで競合することがあります。
そこで次を検討しました。
- ページごとの役割を分ける
- 重複しているコンテンツを整理する
- 必要に応じてページの統合を検討する
「1キーワード=1ページ」で機械的に増やすのではなく、検索テーマごとに主担当となるURLを決め、他のページはそれを補助する。この考え方をサイト構造に反映させる作業です。
新規記事のテーマ選定基準
既存記事の改善と並行して、新規記事の候補も調査しました。
テーマ選定で確認したのは次の項目です。
- 検索需要
- 既存コンテンツとの重複
- SERPの状況
- 事業との関連性
- ターゲット読者との適合
- 既存ホワイトペーパー等との連携可能性
- 自社が専門情報を提供できるか
ここで明確にしていた判断基準があります。検索需要があるだけでは採用しないということです。
判断の軸は、「このテーマで検索する人が、クライアントの事業と関係するか」です。
検索数が大きくても、検索意図が事業や見込み顧客と離れていれば、流入増がリード獲得につながらないことがあります。流入は増えても商談につながらない、という状態は避ける必要がありました。
実装体制を踏まえた優先順位と実施時期の調整
この案件で、SEO施策そのものと同じくらい重要だったのが、提案した施策を実際に実装できるかどうかでした。
必要と判断した施策は、実装のしやすさにかかわらず提案しています。ただし、大手企業のサイト運用には次のような制約が伴います。
- Web制作担当部署との連携が必要
- CMS上、すぐには変更できない項目がある
- 社内のリソースが不足している
- 外部の制作会社へ依頼しなければ変更できない箇所がある
- 優先度が高い施策でも、他業務との兼ね合いで実装が後回しになる
- 記事制作スケジュールが計画より遅れる
これらは、施策の正しさとは別の次元の問題です。正しい提案であっても、実装されなければサイトは変わりません。
そこで、施策を「重要度」だけでなく「実装難易度」と「実施時期」の両面から整理し、次の4つに振り分けました。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| すぐできるもの | 記事本文の修正など、担当者の判断で対応可能 |
| 記事制作時に随時対応するもの | 新規記事・リライトのタイミングでまとめて反映 |
| 制作会社へまとめて依頼するもの | テンプレート修正など、個別依頼だとコストが合わないもの |
| 将来のリニューアル時に行うもの | サイト構造の大幅な変更を伴うもの |
この振り分けの結果として、保留となった施策、実装時期を後ろへずらした施策、支援期間内には未実装だった施策があります。
これは施策そのものの良し悪しとは別に、組織でWebサイトを運用する際に起こりうる実装上の制約です。むしろ、実装体制を考慮せずに理想的な施策一覧だけを提出すると、その一覧は「対応しきれないタスクリスト」として放置されます。
SEOコンサルティングの価値は、施策案を大量に出すことではなく、重要な施策を見極め、実行可能な形まで落とし込むことにあります。
改善したもの、しなかったもの
施策実施後の状況を、正確に記載します。
確認できたのは次の傾向です。
- 一部のテーマでは、検索可視性の改善傾向が確認された
- 新規記事のなかに、比較的早く検索評価を得たものがあった
- リライト後に改善が見られたテーマがあった
一方で、次のような結果もありました。
- 順位が安定しないテーマ
- 改善が確認できなかったテーマ
- 一時的に上昇したあと下落したテーマ
- 実装が遅れた施策
- 支援期間内に未実装だった施策
したがって、この事例について「SEOで大幅な成果を達成した」「問い合わせが増加した」「流入が何倍になった」といった表現は使いません。事実と異なるためです。
SEOは、実施した施策がすべて想定どおりに効くものではありません。重要なのは、効かなかった施策も含めて何が起きたかを確認し、次の判断へ反映させることです。
改善が見られなかったテーマについては、施策の質の問題なのか、検索意図の捉え方の問題なのか、そもそもSERPの構造上その領域で上位を取るのが難しいのかを切り分ける必要があります。この切り分けを行わないまま次の施策へ進むと、同じ失敗を繰り返すことになります。
この事例から言える実務的なポイント
この案件から整理できる要点は、次の12点です。
- 既存記事をすべてリライトする必要はない
- すでに上位の記事は触らない、という判断も重要
- 当初狙っていたキーワードと、実際に順位・流入が確認されるキーワードは一致しないことがある
- 検索意図と記事内容が一致しているかを確認する
- SERPを確認し、検索する人が求める情報を把握する
- 上位ページの共通項に加えて、自社の一次情報を上乗せする
- 情報記事とサービスページの役割を分ける
- 内部リンクで記事群とサービスページをつなぐ
- SEO項目だけでなく、読みやすさ・UI・CTAも改善対象に含める
- CMS・社内体制・制作リソースを踏まえて、優先順位と実施時期を調整する
- SEO施策の価値は提案数ではなく、重要な施策を実装につなげられるかで考える
- 結果が出なかった施策も検証し、次の改善へ反映させる
今回の案件で特に重要だったのは、7・8・10の3点でした。
情報記事は多数あり、サービスページにも拠点や体制といった具体的な情報が記載されていました。それでも、記事を読んだ人がサービスページへ移動する導線は十分に設計されていませんでした。7と8は、この接続を作るための論点です。
10については、施策の重要度と実装のしやすさが必ずしも一致しないという前提を、計画の段階で織り込む必要がありました。ここを考慮しない改善計画は、計画のまま残ることになります。
自社サイトで同じ設計を行うには
この記事で紹介したプロセスは、規模の大小を問わず適用できます。
まず自社の状況を確認したい場合は、物流会社のSEOチェックリストで、既存ページの状態と導線を点検してください。
依頼先の選定を進めている段階であれば、物流会社のSEO会社・コンサルの選び方で、確認すべき項目と質問をまとめています。
ツリーズコンサルティングでは、物流・倉庫・3PL領域について、荷主側の検索キーワード500件と物流会社側の集客キーワード20件を収集し、代表的なSERP、実在する物流会社のサービスページ、業界ページ、比較・選定コンテンツを確認したうえで、253の検索テーマと46のページ母型に整理しています。
この整理をもとに、サービス × 商材 × 地域 × 条件で荷主の検索を分解し、検索テーマごとの主担当URLを決めたうえで、検索からサービスページ、問い合わせ、商談までの導線を設計します。
現在のサイトについて、何を改善し、何を触らないべきかの整理からご相談いただけます。