物流の外部委託を検討し始めると、「3PL」という言葉に行き当たります。ただ、物流会社のWebサイトでは「3PL対応」「ワンストップ物流」といった表現だけでは、実際に何をどこまで任せられるのか判断しにくい場合があります。
この記事では、3PLという言葉の意味を国土交通省の定義から確認したうえで、倉庫委託・配送委託・発送代行との違い、委託できる業務、メリットと注意点、料金の考え方、導入の流れ、事業者を選ぶときの確認項目までを整理します。
先にひとつだけ述べておくと、「3PL」という名称だけでは、その会社に委託できる範囲は判断できません。3PLは概念を指す言葉であり、実際のサービス範囲は事業者ごと・契約ごとに異なります。この記事は、その差を自分で確認できるようになることを目的にしています。
3PLとは
3PLは、Third Party Logistics(サードパーティ・ロジスティクス)の略です。
国土交通省は「3PL事業の総合支援」のページで、3PLを、荷主企業に代わって効率的な物流戦略の企画立案や物流システム構築の提案を行い、かつ「それを包括的に受託し、実行すること」と説明しています(国土交通省「3PL事業の総合支援」)。
ここで押さえておきたいのは、定義の中心が「誰が」ではなく「何を、どこまで担うか」に置かれている点です。
- 荷主企業に代わって、物流のやり方そのものを企画・提案する
- 物流システムの構築を提案する
- 個別の作業ではなく、包括的に受託して実行する
つまり3PLは、単に倉庫を借りる、配送を頼むといった個別の外注とは、想定している範囲が異なります。国土交通省の用語集でも、荷主への物流改革の提案、荷主との長期的な関係、情報システムの提供といった要素が特徴として挙げられています。
「第三者だから3PL」という説明だけでは足りない
3PLの解説では、「1PL=荷主が自社で行う」「2PL=運送会社などが担う」「3PL=第三者が担う」という図式がよく使われます。理解の入口としては分かりやすい整理ですが、これだけで定義を済ませると誤解が生じます。
国土交通省の用語集でも、荷主と輸送事業者の関係において第三者にあたることが呼称の由来だと説明されていますが、説明の中心は「荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する」という業務の中身のほうです。
そのため、この記事では次のように整理します。
3PLとは、荷主に代わって物流の設計・運用・改善を包括的に担う考え方であり、「第三者が関与しているかどうか」だけで決まるものではない。
この整理が実務上重要なのは、「第三者に委託しているから3PLだ」と考えると、単なる倉庫保管の委託まで3PLに含まれてしまい、事業者を比較する基準が失われるためです。
3PLを簡単な例で理解する
架空のEC企業A社を例に考えます。A社は自社で商品を仕入れ、ECサイトで販売しています。
従来の形(個別に委託する)
A社は、保管を倉庫会社に、ギフト包装を流通加工の会社に、配送を運送会社に、在庫データの管理を自社のシステムで、というように業務ごとに委託先を分けています。この場合、各社との調整、データの受け渡し、トラブル時の切り分けは、すべてA社が行うことになります。
3PLの形(包括的に委託する)
A社は、3PL事業者と契約し、保管・入出荷・流通加工・配送・システム連携をまとめて委託します。窓口が一本化され、物流の設計や改善提案も委託先が担う形です。
図1:委託の形の違い(図版案)
【従来の個別委託】
荷主
├── 倉庫会社(保管)
├── 流通加工会社(梱包・セット組)
├── 運送会社(配送)
└── システム会社(在庫・出荷データ)
※荷主が各社を個別に管理
【3PL】
荷主
↓
3PL事業者(設計・管理・改善)
↓
保管・入出荷・流通加工・配送・システム等
※窓口を一本化できる場合がある
ここで注意したいのは、3PL事業者が倉庫・車両・システムをすべて自社で保有しているとは限らないことです。自社拠点を使う事業者もあれば、協力会社の倉庫や運送会社を組み合わせて体制を構築する事業者もあります。窓口が一本化されていても、その裏側の構成は事業者によって異なります。
そのため、提案を受けるときは「どの拠点で、どの会社が、どの作業を行うのか」を確認しておくと、稼働後の責任範囲が把握しやすくなります。
3PLで委託できる業務
3PLとして提供される業務の代表例を整理します。ただし、すべての3PL事業者が以下のすべてを提供するわけではありません。提供範囲は事業者と契約内容によって異なります。
物流設計
- 物流拠点の配置(何拠点を、どこに置くか)
- 在庫配置(どの拠点にどの商品を置くか)
- 配送方法・配送区分の設計
- 作業工程の設計
- コスト構造の整理
倉庫・在庫管理
- 入荷、荷受け
- 検品
- 保管(常温・定温・冷蔵・冷凍など)
- 棚卸
- 在庫管理(ロット、賞味期限、シリアル等の管理を含む場合がある)
出荷
- ピッキング
- 出荷検品
- 梱包
- 送り状発行・出荷
流通加工
- ラベル貼付、値札付け
- セット組、詰め合わせ
- ギフト包装、のし対応
- 検品、検針
- 商品ごとの個別作業
配送
- 配送会社の手配
- 配送区分・配送条件の設計
- 配送状況の管理
- 返品の受け入れ・処理
システム
- WMS(倉庫管理システム)の提供
- OMS(受注管理システム)や受注データとの連携
- ECカート・基幹システムとのデータ連携(API、CSVなど)
- 在庫・出荷データの管理と可視化
改善
- KPI(誤出荷率、出荷リードタイム、在庫差異など)の確認
- 作業改善
- 物流コストの見直し
- 拠点・配送体制の見直し提案
見積や提案を比較するときは、これらの項目のうちどこまでが基本の受託範囲で、どこからが別途対応・別途費用なのかを確認します。同じ「3PL」という言葉でも、保管と出荷が中心の提案と、設計・システム・改善まで含む提案では、内容も費用も比較になりません。
3PLと物流アウトソーシングの違い
この2つは混同されやすい言葉です。
物流アウトソーシングは、物流業務を外部に委託すること全般を指す広い言葉です。次のような一部業務だけの委託も含まれます。
- 保管だけを倉庫会社に委託する
- 配送だけを運送会社に委託する
- 梱包・発送作業だけを委託する
3PLは、その中でも、単一作業の受託にとどまらず、複数の物流機能をまとめ、設計・運用・改善まで担うことを想定した言葉です。
広く物流業務の外部委託を「物流アウトソーシング」と捉えるなら、3PLはその中でも、より包括的な設計・運用を含む形として整理できます。
| 比較 | 一般的な個別委託 | 3PL |
|---|---|---|
| 委託範囲 | 一部業務 | 複数機能・包括的 |
| 物流設計 | 荷主が中心 | 3PL事業者が提案する場合がある |
| 管理 | 荷主が複数社を個別に管理することもある | 窓口をまとめられる場合がある |
| システム | 個別 | 統合・連携を含む場合がある |
| 改善 | 契約業務が中心 | 継続的な改善提案を含む場合がある |
ただし、この表は傾向の整理であり、線引きの基準ではありません。「3PL」と書かれていても保管と出荷の受託が中心の場合もあれば、「物流アウトソーシング」と書かれていても設計や改善まで含む場合もあります。
判断材料になるのは名称ではなく契約内容です。 提案書や見積の中で、設計・システム・改善が業務範囲に含まれているかを確認してください。
図2:委託範囲の広がり(図版案)
個別業務の委託(保管だけ、配送だけ)
↓
複数業務の委託(保管+出荷+配送)
↓
包括的な物流設計・運用・改善(3PLとして提供されることが多い領域)
※段階の間に明確な境界線があるわけではない
3PLと倉庫会社・運送会社の違い
ここも誤解が生じやすい部分です。
まず前提として、「倉庫会社だから3PLではない」「運送会社だから3PLではない」という切り分けは成り立ちません。 倉庫会社や運送会社が事業範囲を広げ、3PLサービスとして提供しているケースは実際にあります。
違いを見るポイントは、会社の名称や業種区分ではなく、何をどこまで受託するかです。
- 倉庫での保管が中心 → 倉庫サービス
- 保管+入出荷+配送を受託 → 物流アウトソーシング
- さらに物流設計、システム、複数工程の統合管理、改善提案まで含む → 3PL的なサービス
ただし、この区分にも明確な境界線があるわけではありません。会社概要のページで「3PL」と掲げていなくても、実質的に包括受託を行っている事業者もあります。
確認すべきは、サービスページや提案書に書かれた受託範囲・対応商材・拠点・システム・改善の有無です。
なお、実際に行う業務によって、関係する制度は異なります。営業倉庫での保管、実運送、利用運送などは、それぞれ根拠となる法律や登録・許可の仕組みが異なるため、「3PL」という呼称そのものと、事業者が実際に必要とする許認可・登録は分けて考える必要があります。詳細を確認する場合は、国土交通省など行政の最新の一次情報をご確認ください。
3PLと発送代行・EC物流の違い
EC事業者からよく出る疑問です。
発送代行は、受注後の商品発送を中心とした委託を指すことが多い言葉です。入荷、保管、ピッキング、梱包、発送といった作業が中心になります。
EC物流は、ECに必要な物流機能を広く指す言葉です。BtoC出荷特有の同梱物対応、ギフト包装、返品処理、モールや自社カートとのデータ連携などが含まれることがあります。
3PLは、ECに限定されない言葉です。BtoBの企業物流も対象に含み、設計・管理・改善まで含む場合があります。
関係を整理すると、次のようになります。
- 発送代行は、EC物流の一部として提供されることがある
- EC物流は、3PLとして提供されることがある
- ただし、EC物流を扱わない3PL事業者も、3PLとまでは言えない発送代行サービスもある
この3つは、包含関係が固定されているわけではありません。 言葉の区分で判断するのではなく、自社が必要としている業務(たとえば「モールと自社ECの受注を統合したい」「BtoBの納品書対応も必要」など)を先に整理し、それが受託範囲に含まれるかで判断するほうが確実です。
3PLを利用するメリット
以下は「必ず得られる効果」ではなく、条件が合えば期待できる可能性のある効果です。実際に得られるかどうかは、委託範囲、事業者の体制、契約内容、自社の商材や物量によって変わります。
物流管理の負担を減らせる場合がある
複数の委託先と個別にやり取りしている状態から、窓口を集約できる場合があります。ただし、後述のとおり荷主側の管理業務がゼロになるわけではありません。
専門知識を活用できる場合がある
倉庫運営、作業設計、配送手配、WMS運用などの知見を持つ事業者に委託することで、自社では判断が難しかった領域について提案を受けられることがあります。
物流体制を見直す機会になる
拠点配置、在庫配置、作業工程、梱包仕様など、自社運用のままでは着手しにくかった見直しを、委託の検討をきっかけに進められる場合があります。
事業の変動に対応しやすくなる場合がある
ECの繁忙期、SKU(商品アイテム数)の増加、出荷件数の増減などに対し、自社で人員や設備を抱えるより柔軟に対応できることがあります。ただし波動への対応可否は事業者の稼働状況によるため、契約前の確認が必要です。
本業へ経営資源を振り向けやすくなる場合がある
物流運営の実務を外部へ移すことで、商品開発や販売にリソースを配分しやすくなることがあります。ただし「必ず本業に集中できる」という性質のものではなく、委託後の管理工数をどの程度見込むかによります。
物流コストを見直す材料になる
3PLの検討時に、保管・入出荷・配送・システムなどの業務と費用を整理することで、現在の物流コストの構造を見直す材料になる場合があります。
ただし、3PLに切り替えれば必ず物流費が下がるとは言えません。 移管費用、システム初期費用、管理費、作業条件によっては、自社運用より費用が増えることもあります。判断は、単価だけでなく総額と条件で行ってください。
3PLのデメリット・注意点
委託を検討する段階で、あわせて確認しておきたい点です。
外部依存が大きくなる
現場運用を委託すると、作業改善のノウハウや現場の実態が社内に蓄積されにくくなる可能性があります。定期的なレポートや現場確認の機会を契約時に設計しておくと、影響を抑えやすくなります。
切り替えに手間と時間がかかる
在庫の移管、商品マスタの整備、システム接続、テスト出荷など、稼働までに一定の作業が発生します。繁忙期直前の切り替えは、リスクが大きくなりやすい点にも注意が必要です。
契約範囲が曖昧だと追加費用が発生する
「どこまでが基本料金に含まれるか」が曖昧なまま始めると、イレギュラー対応、緊急出荷、特殊梱包などのたびに追加費用が発生することがあります。想定される作業を洗い出し、費用の扱いを事前に確認してください。
システム連携の検討が必要になる
ECカート、受注管理、基幹システムとのデータ連携は、稼働前に確認が必要な領域です。連携方式(API、CSV、手動取込など)、頻度、エラー時の対応を確認します。
事業者の変更が簡単ではない場合がある
在庫の物理的な移管、システムの再接続、作業仕様の再構築が必要になるため、一度稼働した後の切り替えには相応の負担がかかります。だからこそ、選定段階での確認が重要になります。
サービスレベルの管理は荷主側にも残る
誤出荷率、出荷リードタイム、在庫差異、クレーム対応など、品質の確認と評価は荷主側にも必要です。
「3PLに任せれば物流管理が不要になる」という考え方は、実務上は成り立ちません。 現場作業は委託できても、KPIの確認、契約範囲の管理、改善の意思決定は荷主側に残ります。
3PLの導入を検討する場面と、向かない場合
固定の条件で判断できるものではありませんが、検討のきっかけになりやすい状況を挙げます。
- 物流業務が複雑になり、社内で管理しきれなくなっている
- 複数の委託先の調整に工数がかかっている
- EC事業の成長などで物量やSKUが増えている
- 自社倉庫の運営(人員確保、設備投資)が事業上の負担になっている
- 拠点配置や配送網を見直したい
- 物流システムを含めて改善したい
- 新規事業の立ち上げに合わせて物流体制を構築したい
一方で、3PL化が合わない場合もあります。
物量が少なく、作業も定型的で、現在の個別委託で品質・コストともに問題が出ていない場合、包括委託に伴う管理費や移管の負担が効果に見合わないことがあります。この場合は、現在の委託先との条件見直しや、一部業務のみの委託から検討するほうが現実的なこともあります。
なお、「月間出荷○件以上なら3PL」といった固定の基準は、この記事では示しません。同じ出荷件数でも、商材、荷姿、温度帯、作業内容、波動、拠点の要件によって適否は変わるためです。判断は、自社の条件を整理したうえで、複数社の提案内容と比較して行ってください。
3PL事業者のタイプ
3PL事業者は、保有する資産の考え方で説明されることがあります。
アセット型
自社で保有する倉庫・車両・設備などの物流資産を活用してサービスを提供するタイプとして説明されます。自社拠点での運用となる場合は、作業体制や設備の状況を確認しやすい面があります。
ノンアセット型
自社保有の物流資産を中心とせず、外部の倉庫・輸送事業者などのネットワークを組み合わせ、物流設計や管理を提供するタイプとして説明されます。要件に応じた組み合わせを提案できる面があります。
両者を組み合わせるタイプ
実際には、自社拠点を持ちながら、エリアや商材によって協力会社を組み合わせる事業者もあります。
どちらが優れているという性質のものではありません。 必要な拠点、設備、温度帯、柔軟性、配送ネットワークによって適した形は変わります。
また、「日本は○型が多い」「海外では○型が主流」といった一般化は、この記事では行いません。市場の構成は時期や調査の定義によって変わるため、古い資料をもとに現在の傾向を断定することは避けます。判断は、個々の事業者が実際に提供できる体制で行ってください。
なお、アセット型・ノンアセット型という呼び方自体にも使われ方の幅があり、実際には両方の特徴を持つ事業者もあります。名称だけで判断せず、今回の案件でどの拠点・輸送会社・設備を使うのかを確認してください。
3PL事業者を選ぶときに確認したいこと
提案を比較する際に確認したい項目を整理します。
自社商材への対応
食品、冷凍・冷蔵品、化粧品、医薬部外品、アパレル、大型品、危険物など、商材によって必要な設備・資格・作業手順が異なります。実績の有無と、対応可能な理由(設備、体制)まで確認します。
物量・波動
通常期と繁忙期の出荷件数、SKU数、季節変動を伝えたうえで、繁忙期に対応できる体制があるかを確認します。
作業内容
流通加工、梱包仕様、検品基準、返品処理など、自社に固有の作業に対応できるかを確認します。
拠点
所在地、温度帯、面積、バース、設備、配送エリア、拡張余地を確認します。
システム
WMSの有無と機能、OMSや受注システムとの連携方式、ECカートや基幹システムとのデータ連携、在庫・出荷データの参照方法を確認します。
導入
移管スケジュール、初期在庫の移管方法、商品マスタの整備、テスト運用の有無を確認します。
運用
日々の連絡体制、レポートの内容と頻度、KPIの共有方法、イレギュラー発生時の対応フローを確認します。
改善
稼働後に改善提案があるのか、その範囲は契約に含まれるのかを確認します。
料金
基本料金に含まれる作業と、従量・オプションになる作業を切り分けて確認します。
会社の規模や知名度だけで判断しないことが重要です。 大手であっても自社の商材・物量に合う拠点や体制がないことはありますし、規模の小さい事業者が特定商材に強いこともあります。見るべきは、自社の物流条件との適合性です。
3PLの料金はどう決まるか
3PLの費用は、一つの相場で示せるものではありません。この記事では具体的な単価の相場は示さず、料金がどのような要素で構成されるかを整理します。
主な構成要素は次のとおりです。
- 初期設計・立ち上げ費用
- システム初期費用(連携開発、マスタ登録など)
- WMS等の月額利用料
- 入荷料(荷受け、検品、格納)
- 保管料(坪単位、パレット単位、ケース単位など、計算方法は事業者による)
- 出荷料(ピッキング、出荷検品、梱包、送り状発行)
- 流通加工費(作業内容ごと)
- 配送料(配送エリア、サイズ、個数による)
- 管理費・システム利用費
- 個別対応費(緊急出荷、特殊梱包、返品処理など)
これらは、物量、SKU数、荷姿、温度帯、作業内容、波動、拠点条件によって変わります。
複数社を比較するときの前提
見積を比較する場合は、同じ条件を提示して見積を取ることが重要です。
提示する条件の例:
- 月間入荷件数・出荷件数(通常期と繁忙期)
- SKU数と在庫量
- 荷姿(ケース、バラ、パレット)
- 温度帯
- 必要な流通加工
- 配送先の地域構成とサイズ帯
- 返品の有無と件数
条件が揃っていないと単価の高低だけを比べることになり、実際の月額総額が逆転することがあります。保管料の計算方法(坪貸しか、使用分か、期間の区切り方か)も事業者によって異なるため、最安の単価だけでは比較になりません。 想定物量を当てはめた月額総額で比較してください。
3PL導入までの流れ
一例として、次のような流れになります。案件によって順序や工程は異なるため、固定の手順として捉える必要はありません。
- 現状の物流を整理する(物量、作業、費用、システム)
- 課題を整理する(コスト、品質、体制、拡張性のどれが問題か)
- 委託範囲を決める(どこまで任せ、どこを自社に残すか)
- 事業者の候補を探す
- 要件を提示する(同じ条件で各社に提示)
- 提案・見積を比較する
- 現場とシステムを確認する(可能であれば拠点を見学する)
- 契約範囲とKPIを決める
- データ・在庫・運用を移管する
- テスト運用を行う
- 本稼働
- 稼働後の確認と改善
移管の段階では、在庫、商品マスタ、出荷先マスタ、受注データ、WMS、OMS、基幹システム、梱包仕様、配送条件などが関係します。こうした情報の整理や連携条件の確認が不十分なまま稼働すると、初期運用で認識のずれやトラブルが生じる可能性があります。必要に応じて、テスト運用や移行確認の工程をどのように設けるか事前に確認してください。
導入前に荷主側で整理しておきたい情報
事業者へ相談する際、次の情報を整理しておくと、提案や見積の前提条件を共有しやすくなります。
- 商材(種類、サイズ、重量、取扱上の注意点)
- SKU数
- 在庫量(平均・最大)
- 月間入荷量
- 月間出荷量(BtoB/BtoCの内訳があるとよい)
- 1日あたりの最大出荷件数
- 繁忙期の時期と規模
- 荷姿(ケース、バラ、パレット)
- 温度帯
- 必要な流通加工
- 配送先の種類(個人、店舗、企業、モール倉庫など)
- 配送地域の構成
- 返品の有無と件数
- 現在の物流費(分かる範囲で)
- 使用しているシステム(ECカート、受注管理、基幹システム)
- 現在困っていること
ただし、すべてが揃っていないと相談できないわけではありません。 自社物流を運営していない企業や、新規事業の立ち上げ段階では、まだ把握できていない項目がある場合もあります。
分かる範囲を伝え、不足している情報を事業者と確認しながら整理できる場合もあります。むしろ、「何が分かっていないか」を伝えたほうが、提案の前提が明確になります。
3PL導入前に確認したい認識のずれ
導入後に問題になりやすいのは、次のような認識のずれです。
「3PLなら全部任せられる」
実際の受託範囲は契約によって決まります。設計や改善提案が含まれない契約もあります。提案書と契約書で、業務範囲を項目単位で確認してください。
「3PLにすれば必ず安くなる」
初期費用、システム費用、管理費、作業条件を含めた総額で比較します。自社運用の人件費・設備費より増える場合もあります。
「物流業務を社内で管理しなくてよくなる」
現場作業は委託できますが、KPIの確認、品質の評価、契約範囲の管理、改善の意思決定は荷主側に残ります。荷主側でも、KPIや品質を確認する担当や運用方法を決めておかないと、問題の把握や改善判断が遅れる可能性があります。
「同じ3PLならサービス内容も同じ」
対応商材、拠点、設備、温度帯、システム、改善範囲は事業者ごとに異なります。名称ではなく、提供内容で比較してください。
「価格表だけで比較できる」
荷姿、物量、作業条件といった前提が揃っていなければ、単価は比較できません。同じ条件で見積を取り、月額総額で比較します。
FAQ
Q. 3PLとは簡単に言うと何ですか?
A. 荷主企業に代わって、物流の企画・設計から実際の業務までを包括的に担うサービス・考え方です。国土交通省も、荷主に代わって物流戦略の企画立案やシステム構築の提案を行い、それを包括的に受託・実行するものと説明しています。倉庫や配送を個別に外注することだけを指す言葉ではありません。
Q. 3PLと物流アウトソーシングの違いは?
A. 物流アウトソーシングは物流業務の外部委託全般を指す広い言葉で、保管だけ、配送だけといった一部委託も含みます。3PLは、その中でも複数の機能をまとめ、設計・運用・改善まで担うことを想定した言葉です。ただし境界は明確ではないため、名称ではなく契約上の受託範囲で判断してください。
Q. 倉庫会社も3PLですか?
A. 会社の業種区分では判断できません。倉庫会社が保管以外に入出荷、流通加工、配送、システム、改善提案までサービス化していれば、3PLとして提供されている場合があります。確認すべきは会社名ではなく、受託できる業務の範囲です。
Q. 運送会社も3PLを提供できますか?
A. 提供している事業者はあります。配送を軸に、保管や流通加工、物流設計まで含めてサービス化している例があります。この場合も、実際にどの業務をどこまで受託できるかを確認してください。
Q. 3PLとEC物流は同じですか?
A. 同じではありません。EC物流はECに必要な物流機能を指す言葉で、3PLはECに限定されず企業物流全体を対象にし得る言葉です。EC物流が3PLとして提供されることもありますが、包含関係が固定されているわけではありません。
Q. 3PLを利用すれば物流費は安くなりますか?
A. 安くなるとは限りません。初期費用、システム費用、管理費、作業条件によっては増えることもあります。単価ではなく、想定物量を当てはめた月額総額と、自社運用の実費を比較して判断してください。
Q. 3PL事業者へ相談するとき、何を用意すればよいですか?
A. 商材、SKU数、在庫量、月間の入出荷件数、繁忙期、荷姿、温度帯、必要な流通加工、配送先と地域、使用システム、現在の課題があると提案の精度が上がります。すべて揃っていなくても相談は可能で、不足分は整理しながら進める進め方もあります。
まとめ
3PLとは、倉庫や配送を個別に外注することだけを指す言葉ではなく、荷主に代わって複数の物流機能を統合し、設計・運用・改善まで担う考え方です。
ただし、実際に「3PL」という名称で提供されているサービスの範囲は、事業者ごとに異なります。名称だけでは委託できる範囲を判断できません。
事業者を比較するときは、次を確認してください。
- 何を委託できるか(設計・システム・改善が含まれるか)
- 自社の商材に対応できるか(設備と実績の裏付け)
- システム連携が可能か
- 拠点の条件が合うか
- 稼働後の運用体制とレポート
- 改善提案の有無と範囲
- 料金の内訳(基本料金と従量・オプションの切り分け)
- 導入・移管の体制
そして、委託後も荷主側にKPIの確認と評価の役割が残ることを前提に、体制を設計してください。
3PLサービスを提供する物流会社の方へ
ここまでは、3PLの委託を検討している荷主企業の方に向けた内容でした。
この記事を読まれている方の中には、自社の3PLサービスをWebでどう伝えるかを検討している物流会社・3PL事業者の方もいらっしゃると思います。ここからは、そうした方に向けた内容です。
(※ツリーズコンサルティングは、物流・倉庫・3PL会社向けのSEO/Web支援を行う会社です。3PLサービスそのものを提供しているわけではありません。)
前半で整理したとおり、荷主は「3PL」という言葉だけでは委託先を判断できません。「3PL対応」「ワンストップ物流」という表現だけでは、荷主が自社の案件に対応できるか判断するための情報が不足する場合があります。
また、荷主が物流委託先を探す検索では、「3PL」だけでなく、サービス・商材・地域・条件を含む検索も候補になります。
- 3PL+地域名
- EC物流
- 食品物流
- 発送代行
- 小ロット
- 冷凍・冷蔵
- 流通加工
このように、サービス・商材・地域・条件を組み合わせて検索されることがあります。検索語によって上位に並ぶページの種類(解説記事、サービスページ、拠点ページ、比較サイトなど)も変わるため、どのページで受けるかは実際の検索結果を確認して判断します。
そのうえで、サービスページには、荷主が判断に使う情報を具体的に落とし込むことになります。
- どの業務をどこまで受託できるか
- 対応できる商材
- 拠点(所在地、面積、温度帯、設備)
- システム(WMS、OMS、連携方式)
- 対応条件(ロット、出荷締め、土日出荷、返品)
- 実績
3PL会社のWebサイトについて、検索需要の整理からサイト構造、サービスページの設計までを扱った記事があります。
物流・倉庫・3PL会社のSEOについてご相談ください
ツリーズコンサルティングは、物流・倉庫・3PL会社のWebサイトについて、検索需要の整理、サイト構造の設計、サービスページの改善、コンテンツ設計、問い合わせ導線の設計を支援しています。
自社の受託範囲をWeb上でどう伝えるか、どの検索需要をどのページで受けるかといった段階からご相談いただけます。
参考(出典)
- 国土交通省「3PL事業の総合支援」 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu03340.html
- 国土交通省 用語集 https://www.mlit.go.jp/term/file000005.html