結論:先に決めるのは「順位」ではなく「いま誰が足りていないか」
人材紹介会社のサイトには、性質のまったく違う2種類の読者がいます。
- 求職者:仕事を探している人
- 求人企業:人を採用したい会社
どちらを優先すべきかという問いに、「一般的にはこちら」という答えはありません。決め手になるのは検索ボリュームでも競合状況でもなく、いま自社のビジネスで詰まっているのがどちらかです。
- 求人(企業側の案件)はあるのに、紹介できる求職者が足りない → 求職者向けを優先
- 登録者はいるのに、決められる求人が足りない → 法人向けを優先
この判断を飛ばして「SEOをやる」と決めると、順位は上がっているのに事業が動かない、という状態になりがちです。
なぜ人材紹介会社のサイトは設計が難しいのか
人材紹介会社のサイトは、求職者と求人企業という、目的の大きく異なる2種類の読者を同時に扱う点が特徴です。
同じ「人材紹介」という言葉を使っていても、検索する人の頭の中はまったく別です。
求職者が知りたいこと
どんな求人があるか。自分の経歴で転職できるか。登録するとどうなるか。無料なのか。しつこく連絡が来ないか。
求人企業が知りたいこと
自社の職種で紹介実績があるか。手数料はどれくらいか。他社と何が違うか。どれくらいの期間で候補者が出てくるか。
この2つを1枚のページで同時に満たそうとすると、どちらの読者にとっても要点がぼやけたページになります。「求職者の方はこちら/企業の方はこちら」と冒頭で分岐させているだけのページも、検索から入ってきた人にとっては、自分向けの情報がどこにあるか分からない状態です。
さらに厄介なのは、社内の温度感が混ざることです。営業サイドは法人リードがほしい、キャリアアドバイザーサイドは登録者がほしい。両方の要望を1つのサイトに同時に反映しようとして、構造が中途半端になるケースは少なくありません。
判断基準:4つの問いで優先順位を決める
1. いま足りていないのはどちらか
直近数か月の数字で見ます。登録数、面談実施数、企業からの求人依頼数、決定数。どこで詰まっているかが分かれば、優先すべき側は見えてきます。
2. 足りない原因は本当に集客か
登録者が足りないのではなく、登録後の面談設定率が低いだけ、という場合もあります。原因が集客の外側にあるなら、SEOを強化しても解決しません。
3. 成果が出るまでの時間軸に耐えられるか
法人向けの検索は、求職者向けに比べて母数が小さく、意思決定にも時間がかかります。短期で数字が必要なら、そもそもSEO以外の手段のほうが合う場合があります。
4. 社内で運用を続けられるのはどちらか
求職者向けは求人情報の更新が継続的に必要です。法人向けは実績や事例の蓄積が効きます。どちらが自社のリソースで回せるかも、現実的な判断材料です。
検索意図が違う、とはどういうことか
具体的に見てみます。
求職者向けの入口になりやすいもの
- 職種名や地域名と組み合わせた求人・転職関連の検索
- 「未経験から○○になるには」といったキャリア情報
- 資格や年収に関する情報収集
- 転職の進め方、面接対策などの手順情報
この層は、情報収集段階の人が多く、いきなり登録に至るとは限りません。ノウハウ記事から求人・職種ページへ、そこから登録へ、という段階を踏む導線が必要です。
法人向けの入口になりやすいもの
- 業界名や職種名を含む採用手法の検索
- 「採用できない」「応募が来ない」といった課題起点の検索
- 人材紹介そのものの仕組み・費用の比較検討
- 他の採用手法との比較
この層は、担当者が社内稟議のために調べているケースも多く、費用の考え方や進め方が書かれているかが効いてきます。
※ここで挙げた例は「こういう方向性」を示すものです。実際にどのキーワードを取りに行くかは、自社の得意領域と競合状況を見て個別に決めるものなので、テンプレートとして機械的に当てはめないでください(考え方は人材SEOのキーワード戦略で整理しています)。
サイト構造の分け方
優先順位が決まったら、構造で分けます。
基本の考え方
- 求職者向けと法人向けで、情報構造と導線を明確に分ける。サイト規模や既存構造に応じて、必要であればディレクトリも分ける
- トップページは両方への入口として機能させ、詳細はそれぞれの領域に持たせる
- グローバルナビゲーションでも、どちらの領域にいるかが分かるようにする
それぞれに置くもの
求職者向け:求人一覧・求人詳細、職種別ページ、地域別ページ、キャリア・転職ノウハウ記事、登録の流れ、サービス紹介(求職者向け)
法人向け:サービス紹介(企業向け)、料金・契約の考え方、業界別/職種別の紹介実績、採用課題に関する記事、導入の流れ、問い合わせ
内部リンクも目的別に分ける
ここが抜けやすいところです。求職者向けのノウハウ記事から法人向けの問い合わせに誘導しても、ほぼ意味がありません。逆も同じです。
記事を書いたら、「この記事を読んでいる人の次の行動は何か」を考えて、同じ側のページへつなぎます。
CVも分ける
- 求職者:登録、応募、相談予約
- 法人:問い合わせ、求人依頼、資料請求
計測も分けて見ます。まとめて「CV数」で見ていると、どちらの施策が効いたのか判断できなくなります。
ケース別の進め方
ケース1:求職者が足りない
職種・地域の求人ページを整備し、その周辺にキャリア情報を置いて受け皿を作る順番が現実的です。記事から先に作ると、流入はあっても登録につながらないことがあります。
ケース2:法人リードが足りない
自社が実際に強い業界・職種を絞って、その領域の採用課題ページと実績を厚くします。全業界を薄く並べても、比較検討段階の企業には響きません。
ケース3:両方足りない
同時に進めるとどちらも中途半端になります。まず片方に寄せ、構造だけは最初から分けておくのが現実的です。
ケース4:すでに片側だけで運用してきた
既存ページが片側に寄っている場合、新しい側を既存階層に混ぜるのではなく、別階層として立ち上げたほうが、後々の設計が楽になります。
よくある間違い
- 1ページで求職者と企業の両方を狙う
タイトルに両方の要素を入れると、どちらの検索にも中途半端になります。 - 検索ボリュームだけで優先順位を決める
求職者向けのほうが母数は大きいことが多いですが、母数と事業インパクトは別です。 - 法人向け記事から求職者向けCTAに誘導している
内部リンクの点検で見つかることが多い抜けです。 - 「人材紹介」の一語で上位を狙おうとする
競合性が高いだけでなく、その検索の中に求職者と企業が混在しています。自社が誰を集めたいのかが表現できません。 - サイト構造を変えずに記事だけ増やす
記事が増えるほど、どちらの領域に属するのか分かりにくくなっていきます。
まとめ
- 求職者と求人企業は、同じサイトの中でも別の読者
- どちらを優先するかは、順位や検索数ではなく事業課題から決める
- 1ページで両方を狙わず、情報構造・内部リンク・CVを分ける
- キーワード例はあくまで方向性。自社の得意領域から個別に組み立てる
人材紹介会社のサイト構造やキーワード設計を見直したい場合は、ご相談ください。